研究課題/領域番号 |
01044117
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山村 研一 熊本大学, 医学部, 教授 (90115197)
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研究分担者 |
増井 禎夫 トロン大学, 動物学部, 教授
スキャンダリウム ジョン ノースカロライナ大学, 遺伝学部, 教授
マーカート クレメント. ノースカロライナ大学, 動物科学部, 教授
若杉 正司 熊本大学, 医学部, 助手 (50201140)
田代 文 熊本大学, 医学部, 助手 (40136213)
宮崎 純一 熊本大学, 医学部, 助教授 (10200156)
MARKERT Clement L. North Carolina State University, Dept. of Animal Science
SCANDALIOS John G. North Carolina State University, Dept. of Genetics
マーカート クレメント ノースカロライナ大学, 動物科学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
6,600千円 (直接経費: 6,600千円)
1991年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1990年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1989年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 挿入突然変異 / 標的遺伝子組換え / トランスジェニックマウス / 遺伝子トラップ / ES細胞 / 受精卵 / 挿入突然変異マウス / ネオ耐性遺伝子 / 胚幹細胞 / キメラマウス |
研究概要 |
哺乳類における発生・分化の分子機構を明らかにする目的で、標的遺伝子組換え技術の確立とその方法を用いて発生異常マウスの作製と発生関連遺伝子の単離解析を行なった。 通常のトランスジェニックスマウス作製の過程で顔の形態形成の異常を呈するマウスを得た。この異常が優性遺伝形式をとること、成体における異常は主として鼻骨と前上顎骨に限局するが、顔面の異常は既に胎生15.5日目に出現し、出生時には上顎組織全体の低形成があることが明らかとなった。導入遺伝子は第13番染色体A5領域に組込まれていた。導入遺伝子に隣接するマウスゲノムDNAを単離し、ヒトを含む他の哺乳類にも保存されている領域を同定した。これをプロ-ブとして変異遺伝子の同定を試みている。 多分化能を有する胚幹細胞(ES細胞)を用いた標的遺伝子組換え法が開発されれば、遺伝子機能の解析ばかりでなくこれ迄不可能であった劣性遺伝病のモデルマウス作製や未知の発生関連遺伝子の単離解析も可能となる。そこでES細胞を用いた生殖キメラマウス作製法の確立をまず試みた。ES細胞については、既に入手ずみのMS1とD3を用いることにした。培養液中に用いる牛胎児血清は事前にロットチェックが必要であること、LIF(leukemia inbibitory factor)はES細胞を分化させずに増殖させるために極めて有効であるが、そのためには5×10^3単位/mlの濃度にしておく必要のあることが明らかとなった。ES細胞を培養する時は、feeder細胞が必要であるが、良いfeeder細胞を樹立するためSTO細胞にLIFとネオ耐性遺伝子を導入しネオ耐性株を単離した。そして、ES細胞の確立しやすさを示標にLS10株を樹立した。このLS10株はD3株の培養に極めて良いことが明らかとなった。ES細胞をレシピエントの胚盤胞腔内に注入してキメラマウスを作製するが、この注入条件の検討を行なったところ、注入前に4℃に冷やしておくこと、注入時の培養液のpHは7.4よりも8.0の方が良いことが分った。これら諸条件の確立により効率良く生殖キメラマウスの作製が可能となった。 ES細胞を用いた遺伝子トラップを行なうため、トラップ用のベクタ-を作製した。リポ-タ-遺伝子としてプロモ-タ-を有さずスプライスアクセプタ-のみを持つlac Zを用い、3′端には選択マ-カ-遺伝子としてネオ耐性遺伝子を用いた。2つのマ-カ-遺伝子の中間には、後のクロ-ニングに便利なように複製開始点等を含むプラスミドを挿入した。このトラップベクタ-をMST細胞に電気穿孔法にて導入し、ネオ耐性株を単離し、ES細胞の状態で発現するかもしくはinvitroでの分化誘導後に発現するものを6クロ-ン選択し上流域を単離した。その結果、0.6〜3.0kbの範囲で単離でき、これらがプロモ-タ-活性を有することが明らかとなった。これらのクロ-ンのうちAyu1について更に詳細に解析し、この遺伝子が成体では、精巣,脳,腎臓,胃・十二指腸等で発現すること、上流域の配列中にはオクタマ-結合モチ-フが2ヶ所,Enーlikeモチ-フが2ヶ所存在することが分った。現在、cDNAの単離を試みている。 ES細胞は、胚盤胞以後のステ-ジで発現する遺伝子のトラップに用いられるが、それ以前のものは原理的に不可能である。そこで、受精卵を対象として、直接遺伝子トラップが行ないうるかを検討した。このため、まず受精卵にネオ耐性遺伝子を注入し、胚盤胞に到る迄G418下で培養し、遺伝子を組込んだもののみを選択できるかどうかを検討したところ、ある程度可能であることが分った。そこで遺伝子トラップ用のベクタ-を作製し、受精卵に注入しG418選択し胚盤胞に迄到ったものを仮親の子宮に戻したところ、生まれたマウスの90%以上が注入した遺伝子を組込んでおり、遺伝子トラップが効率良くおこっていることが示唆された。現在、実際のトラップした遺伝子のクロ-ニングを試みている所である。また、トラップベクタ-の構造も遺伝子トラップの効率に強く関与すること、ポリオ-マエンハンサ-が有効であることが分った。ポリオ-マエンハンサ-は弱いプロモ-タ-にも働き、ネオ耐性遺伝子の活性を上昇させたためと考えられた。
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