研究課題/領域番号 |
01044119
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中津 誠一郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (70040805)
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研究分担者 |
DECKER Stuar ロックフュラー大学, 生化学部, 助教授
MINGーCHEH Li オクラホマ大学, 理学部, 准教授
西山 和夫 宮崎大学, 農学部, 助手 (40164610)
水光 正仁 宮崎大学, 農学部, 助教授 (00128357)
LIU Ming-cheh The University of Oklahoma, U. S. A. Department of Chemistry and Biochemistry As
STUART Decker J. The Rockefeller University, U. S. A. Department of Biochemistry Assistant Profes
LIU MingーChe オクラホマ大学, 理学部, 准教授
MINGーCHEN Li オクラホマ大学, 理学部, 助教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
8,700千円 (直接経費: 8,700千円)
1991年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1990年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1989年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
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キーワード | 硫酸化チロシン / 翻訳後修飾 / ゴルジ体 / 牛肝臓 / 硫酸転移酵素 / オリゴペプチド / 硫酸化チラミン / レセプタ- / ミクロゾ-ム / ヒルジン / オリゴビペプチド |
研究概要 |
細胞内で蛋白質が翻訳された後、そのうちのチロシンが硫酸化されることが近年発見された。本共同研究者らはウイルスにより誘導される癌細胞では正常細胞に比べ、蛋白質の硫酸化チロシンが激減することを見出した。また、遺伝子工学の分野でも翻訳後修飾の蛋白質の修飾が機能発現に極めて重要であることが明らかにされており、このチロシン硫酸化もその一つである。本プロジェクトでは蛋白質のチロシン硫酸化の機能解明と、チロシン硫酸化が発癌と細胞増殖制御にどのように関与しているかを解明することを目的として研究を行った。 本研究の主目的である硫酸化チロシン蛋白質が発癌と細胞増殖制御にどのように関与しているかを解明することに関して、チロシン硫酸化は、蛋白質の立体構造に強く影響を与え、それに伴い生理機能調節に関与している可能性が裏づけされた。また、ラット胚繊維芽細胞(3Y1)とヒト肝癌細胞HepG2を用いて硫酸化チロシン蛋白質が代謝され、細胞外に分泌されるフリ-の硫酸化チロシンを定量した際、両細胞とも多量のフリ-の硫酸化チロシンを分泌していることが判明した。興味のあることに肝癌細胞HepG2のみに硫酸化チラミンの存在を発見した。本化合物は神経伝達機能に重要な役目を持っていると思われている。 我々は現在までに牛肝臓のゴルジ体を多く含むミクロゾ-ム膜画分に硫酸化チロシン蛋白質に特異的なレセプタ-と考えられる膜結合TyrSーbinding protein(TyrSR)の存在を明らかにしており、同画分にこのレセプタ-が硫酸化チロシン蛋白質と複合体を形成し存在することが示されたことより、硫酸化チロシンをシグナルとし、レセプタ-を介在した分泌蛋白質の細胞内輸送系を提唱している。しかし分泌後の硫酸化チロシン蛋白質の挙動は現在のところ全く不明であるため、血液中に硫酸化チロシン蛋白質あるいはペプチドに対し特異的なキャリア-プロテインの存在を想定し、牛血清中のTyrSーbinding protein(TyrSBP)の検索及び単離精製を行い、その諸性質を検討した。その結果、硫酸化チロシン蛋白質に特異的に結合する分子量160kのBinding Proteinが得られた。 牛肝臓のゴルジ体から調製したTyrosylprotein sulfotransferase(TPST)はZーGluーTyrやBocーCCKー8など数種のオリゴペプチドを硫酸化し、TyrのN端側がAspの時Gluに比べ効率よく硫酸化し、Lysの場合硫酸化しないことを明らかにした。このことよりTPSTの基質の忍識はアミノ酸配列に依存していることが示唆された。しかしTPSTの分離・精製は極めて困難である。最適基質ペプチドの検索及びアフィニティ-クロマトグラフィ-のリガンドの検討のため、硫酸化チロシン蛋白質をモデルとした11種の基質オリゴペプチド及び硫酸体の合成、構造同定を行った。その結果、最適ペプチドBocーAspーTyrーValの合成に成功した。 ヒル由来の血液凝固阻害剤ヒルジンは63番目のTyrーのみ硫酸化を受けており、遺伝子工学的にE.coliまたは酵母が生産したヒルジンは硫酸化されていないため、in vitroでの硫酸化が必要とされる。牛肝臓由来のTPSTによる硫酸化を試みた結果、63番目のTyrのみの硫酸化に成功した。これらのことより、リコンビナント蛋白質の翻訳後修飾として、牛肝臓由来のTPSTを用いて特異的チロシン硫酸化が可能となった。 現在までのところフェノ-ル硫酸転移酵素(PST)は細胞質可溶性画分にのみその存在が報告されているが、ミクロゾ-ム画分には報告されていなかった。しかし、今回ミクロゾ-ム画分に新規の膜結合酵素の存在が示唆された。 以上の内容を米国生化学会、日本生化学会および日本農芸化学会等で発表したところ、生化学会においては、発癌と細胞増殖制御の観点から、また、農芸化学会においては、遺伝子工学の産物としての蛋白質の修飾と機能発現という観点から、注目をあびた。
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