研究課題/領域番号 |
01044120
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
塩之入 洋 横浜市立大学, 医学部, 講師 (20128599)
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研究分担者 |
BRUNNER Hans ローザンヌ大学, 医学部(スイス連邦), 教授
SAMBHI Mohin カリフォルニア大学, ロスアンゼルス校医学部, 教授
CHOBANIAN Ar ボストン大学, 医学部, 学部長教授
姫野 秀朗 横浜市立大学, 医学部病院, 診療医
高崎 泉 横浜市立大学, 医学部病院, 診療医
広瀬 茂久 東京工業大学, 理学部, 教授 (10134199)
CHOBANIAN Aram V. Boston University School of Medicine, Dean and Professor
SAMBHI Mohun カリフォルニア大学, 医学部(米国), 教授
CHOBAMIAN Ar 米国、ボストン大学, 医学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
11,400千円 (直接経費: 11,400千円)
1991年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
1990年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1989年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
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キーワード | 高血圧治療薬 / 高血圧性心血管給併症 / 喫煙 / 交感神経系 / レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 / 心房性ナトリウム利尿ホルモン / エンドセリン / ファイブロネクチン / レニン / アルドステロン / プロスタグラジン / フィブロネクチン / アンジオテンシン変換酵素 / 高血圧 / 血管障害 / 動脈硬化 |
研究概要 |
高血圧性心血管系合併症には脳卒中(脳出血、脳梗塞など)、高血圧性心不全、移血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、腎不全、大動脈瘤などがある。校血圧に曝さ連た血管では平滑筋層(中膜)の肥厚と肥太を認め、血管内膜層にはコレステロ-ルの沈着と平滑筋細胞の遊走ならびに泡沫細胞の形成を認め、動脈硬化性病変を伴うことが多い、これら血管病変の発症、進展と合併症の発症にかかわる危険因子としては、高血圧、加齢、男性、血清脂質の異常、喫煙、糖代謝の異常、各種血管作動物質ならびに増殖因子の異常などが挙げられている。本研究では、それら危険因子と高血圧について研究検討したので、その概要を記す。 1.長期高血圧治療と血清脂質ならびに糖代謝。 高血圧治療薬のうち降圧利尿薬あるいはβー遮断薬の長期投与では、血清脂質ならびに糖代謝が悪化することがあり、血圧が良好にコントロ-ルされても血管合併症が増加することがあると報告されている。本研究では、α1ー遮断薬(フラゾシン)、Ca^<++>拮抗薬(フェロジビン)、angiotesin変換酵素(ACE)阻害薬(カプトプリル、シラザプリル、リシノプリル)を糖代謝正常ならびに糖代謝異常を示す高血圧患者それぞれを対象に6ケ月以上投与した。その結果、いずれの降圧薬によっても血圧は良好コントロ-ルされ、血清脂質ならびに糖代謝は悪化することはなかった。共同研究者のBr.Chobanianらは高コレストロ-ル食で飼育した実験動物にACE阻害薬カプトプリルを投与すると、ACE阻害薬を投与しない対象動物に比べて、動脈硬化性血管病変の発症が予防出来たと報告しているので、これらの降圧薬が従来の降圧薬より優れている可能性を示唆している。 2.喫煙と高血圧。 常習的喫煙高血圧患者では、非喫煙高血圧患者に比べて、心血管系合併症が多発することが知られている。本研究では、健常正常血圧若年男性で常習的喫煙者を対象として、本態性高血圧の家族歴をもつ者(家族歴陽性群)と高血圧の家族歴をもたない者(家族歴陰性群)にわけて、急性喫煙効果を観察した。その結果、急性喫煙によって両群ともに血圧ならびに心拍数が上昇した。この時、血漿カテコラミンは同等に増加したにもかかわらず、その血圧の上昇の程度は家族歴陽性群で有意に大きく、また喫煙50ー60分後にも家族歴陽性群で有意な血圧の上昇が続いて認められた。この結果は30ー6
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0分毎に喫煙すればこの血圧上昇が繰り返えされることを示唆しており、家族歴陽性群では喫煙が心血管系により大きな影響を与えることを明らかにした。従って、高血圧性心血管系合併症を減少させるためにも禁煙指導は臨床的に大切である。 3.交感神経系と高血圧。 前述のようにカテコラミン増加が同等であっても家族歴陽性群では血圧上昇反応が大きいことが示された。そこが、正常血圧者、境界域高血圧者、本態性高血圧患者を対象として、寒冷、精神ストレス刺激ならびに血管作動性物質による血圧変動刺激などによる試験を行い、筋交感神経活動を直接測定した。その結果、境界域高血圧者、本態性高血圧患者では正常血圧者に比べて末梢交感神経活動は亢進しており、圧受容体を介する調圧系の変調を伴っていること、これには一部内因性血管作動物質angiotensin IIが関与していることが示唆された。 4.レニン-アンジオテンアンーアルドステロン系と高血圧性血管合併症。 レニンーアンジオテンシン系の亢進している高血圧では高血圧性血管合併症が多いとの報告があり、レニンーアンジオテンシン系の抑制されている原発性アルドステロン症では高血圧性血管合併症が少ないと推定されていた。本研究では、ヒト原発性アルドステロン症では、血漿レニンは活性型および不活性型ともに測定限界以下であり、組織レニンmRNAレベルでも完全に抑制されていることを明らかにした。また、原発性アルドステロン症での高血圧性血管合併症を調査した本研究の結果では、高血圧性血管合併症発現例数頻度37.5%、発症例数頻度62.5%と高いことが明らかにされた。従って、二次性高血圧である原発性アルドステロン症では副腎腺腫の局在が明らかにされた場合は速やかに外科的手術が勧められるべきである。 5必血管作動性物質の受容体の研究。 本研究において心房性ナトリウム利尿ホルモン(ANP)の受容体が副腎皮質球状層ならびに髄質に局在することを明らかにし、ANPは正常副腎皮質球状層からのアルドステロン分泌を抑制するが、原発性アルドステロン症の副腎腺腫からのアルドステロン分泌は抑制できなかった。しかし、褐色細胞腫からのカテコラミンの分泌は抑制した。ANP受容体にはA,B,C型の受容体が存在し、A,B型受容体は細胞外のANP受容体に続いて細胞内にはグアニレ-トシクラ-ゼ活性部分を有している140kDaの一重体である。一方、C型受容体は70kDaのサブユニットからなる二重体であり、主として細胞外に突出している。本研究では、C型受容体の遺伝子解析から85キロベ-スに8つのエクソンを有することを明らかにし、A型受容体は17.8キロベ-スに22つのエクソンを有するので、遺伝子解析上からもこれら受容体は異なっていることが明らかになった。さらに、牛副腎皮質のA型受容体を抽出して検討した結果、通常の140kDaの一重体のA型受容体のほかにA型受容体の四重体である500ー550kDaの受容体の存在も発見した。 エンドセリン(ET)は血管内皮細胞から分泌される強力な血管収縮物質である。その構造は21個のアミノ酸からなるペプチドであり、ヒトではアミノ酸配列が若干異なる3種類のETが存在しET1,ET2,ET3と呼ばれている。血管内皮にはET1,副腎や腸管にはET3,脳にはET1とET3がそれぞれ主として存在する。ETは血管作動性物質であるANP、レニン、アルドステロン、バソプレシン、カテコラミンなどの放出作用も持っている。それらの作用は細胞膜受容体を介して発現される。本研究では、ETが血管以外の平滑筋にも作用するかをブタ尿管の収縮作用で検討した結果、ET1,ET2,ET3はそれぞれ用量依存性に尿管をリズミカルに収縮された。そこで尿管平滑筋細胞膜ET受容体を検討してみると、ET1は60kDa,36kDa,31kDaの大きさの受容体、ET3は60kDa,31kDaの受容体に結合することが明らかになった。牛肺を用いてET受容体の詳細を検討いた結果、3.5kgの牛肺から200ugのET受容体が得られ、その受容体の大きさは52kDaと34kDaを示すものが存在した。これはET1とET3に同時に結合能を持つ非特異的ET受容体(ETB受容体と呼ばれる)と極めて類似のアミノ酸配列を持っていた。さらに、牛ETB受容体の遺伝子解析の結果、そのcDNAは441個のアミノ酸構成を持ち、26個のシグナルペプチド部分と415個の成熟ETB受容体部分を持っていた。この牛ETB受容体のアミノ酸配列は牛ETA受容体(ET1特異的受容体)と63%、ラットETB受容体と85%の相同があった。また、ETB受容体はmetal proteinaseによって大分子型から小分子型に切断されることも明らかにした。 6.実験高血圧における血管細胞外基質ファイブロネクチンの研究。 血管壁中膜層を構成する血管平滑筋細胞は細胞外基質ファイブロネクチンなどを支持組織としており、またこれらを介しての代謝も行われている。血管壁での脂質代謝は血管内皮細胞損傷状態では悪影響をうけることを本研究から明らかにした。ファイブロネクチンに接触した平滑筋細胞は、その表現型が収縮型から増殖型に変化し、これは血管内膜層への遊走能を持ちさらには変性LDLーコレステロ-ルを貧食し泡沫細胞化して、動脈硬化性病変形成に参加する。本研究では、各種高血圧ならびに高週齢の実験動物の血管壁ファイブロネクチン遺伝子mRNAの発現と蛋白質ファイブロネクチンの増加を認めた。従って、高血圧そのものと加齢はいずれも独立した動脈硬化性病変形成と進展の危険因子である可能性が示された。 隠す
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