研究分担者 |
山田 英俊 徳島文理大学, 薬学部, 助手 (90200732)
西沢 麦夫 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (40137188)
ソフニ カイルー インドネシア国立原子力研究センター, 研究員
カイルー インドネシア科学院, 生物学研究センター, 主任研究員
松本 武 ダイゼル化学工業株式会社, 総合研究所, 主任研究員
徳山 孝 大阪市立大学, 理学部, 教授 (70046944)
CHAIRUL National Centre for Research in Biology, Indonesian Institute of Science (LIPI)
CHAIRUL Sofni M Centre for the Application of Isotopes and Radiation, Indonesian Atomic Energy A
カイルー ソフニ インドネシア国立原子力研究センター, 研究員
カイルー インドネシア科学院, 生物学研究センター, 主任研究員
|
研究概要 |
本研究はインドネシア科学院生物学研究センタ-との共同研究として1982年以来続けてきたものであり,インドネシア産の熱帯動植物より有用成分を見出し,化学構造の決定,合成によりその本体を解明しようとするものである。インドネシアに伝承されている民間薬(ジャム-)を中心とする薬用植物成分の研究は薬学部門のいくつかの研究グル-プにより進められているので,私達は主に熱帯産有毒植物成分に的をしぼって研究を進めることにした。本プロジェクトを開始するに当って,はじめにインドネシア各地に伝承され,現在も用いられている毒物の調査をおこなった結果,比較的立入ることが容易な中部スラウェシの原住民の間で,現在も毒矢が狩獵に用いられ,動物あるいは植物由来の毒物が利用されていることを知り,その調査研究をおこなうことにした。 平成元年度の活動として,北スラウエシ・メナドのサム・ラトランギ大学のB.スロト博士からの情報をもとにして,中部スラウエシのポソ市より約30km北東のウルボンカ地方に住む原住民タ-族のワトソグ部落を訪れた。この部族は今も吹矢を用いており,交渉の結果,矢毒に用いる樹液の若干量と原植物の標本を入手することができた。又,この部族が用いている魚毒植物および各種の薬用植物約50種,サルノコシカケ科きのこ約20種も採集することができた。しかし,これらの各植物の内,特に毒性活性に興味がもたれた数種は,ボゴ-ルへ帰着後,標本館で検索の結果,矢毒植物はイラクサ科Antiaris toxicaria,魚毒植物はトウダイグサ科Croton tiglium及びマメ科Derris ellipticaであり,残念乍ら毒成分既知の植物であった。また同時に採集した薬用植物の内,Garcinia celebica(現地名Maro),Cudrania cochinchinensis(同Taramanu)など9種に強い抗腫瘍プロモ-タ-活性を認め,分画の結果,前者はキサントン分画に,後者はフラボノイド分画に活性が見出せたので,更に分離精製を加えており,ここまでの成果は平成3年9月の第50回日本癌学会(東京)で発表した。この調査研究では,スラウエシ産Bufo属蛙の表皮成分をジャワ,西スマトラ産蛙の成分と比較するのも目的の一つであったので,ワトソグ村で採集したBufo sulavoesiensisの表皮成分を検索の結果,新規強心ステロイドの他に含窒素長側鎖をもつステロイドアルカロイドを分離し,ジャワ産Bufo melanosticutusの大環状アルカロイドとは多少の相異があることがわかった。また,同部族は矢毒として緑色の毒蛙の表皮の毒も用いると云われていたので,それの採集を試みたが成功せず,平成2年度の再度の活動に希望をつないだ。 平成2年度は,前年度とほゞ同じ経路で再びワトソグ村を再れて一週間の滞在中,主として矢毒蛙の採集を試みたがやはり成功せず,この種の植物の採集には更に長期の滞在と根気よい探索の必要を痛感し,各研究著共,体力的限界を思い知らされる結果となったのは残念であった。この調査研究では,元年度採集した有望植物約10種Banoderma applanatumなどサルノコシカケ科きのこ類十数種を追加採集した。G.applanatumからは,酸性成分として抗腫瘍プロモ-タ-活性を示すラノスタン形トリテルペンapplandxidic acids十種類を単離し,その内A〜Dの4種の構造を決定しPhytochemistry読上及び平成3年5月クアラルンプ-ル(マレ-シア)で開かれた「熱帯雨林の医用資源シンポジウム」で発表した。 平成3年度は,これまでに採集した材料の処理と結果のまとめ,および調査活動としては北スマトラ・トバ湖周辺でのBufo属蛙などの採集に当てることにした。この活動では材料の採集等で所期の目的を達成できたので,現在その処理と成分分析を進めつつある。成果の公表は,上記クアラルンプ-ルのシンポジウム及び第50回日本癌学会のほか,Bufo属蛙の表皮アルカロイド等については,平成3年4月日本化学会第61春季年会(横浜),同10月の第33回天然有機化合物討論会(大阪)で発表した。また2年毎に更新してきたインドネシア科学院との共同研究プロジェクトは,平成4年3月で第5回の更新が終了するが,平成3年5月のボゴ-ル訪問時に,直接の対応機関である生物学研究センタ-所長との協議により,引続き更新して継続することの合意した。
|