研究課題/領域番号 |
01044131
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大同工業大学 |
研究代表者 |
山寺 秀雄 大同工業大学, 工学部, 教授 (70022499)
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研究分担者 |
GALSBOL Frod コペンハーゲン大学, 助教授
SCHAFFER Cla コペンハーゲン大学, 教授
小島 正明 岡山大学, 理学部, 助教授 (20022725)
柏原 和夫 名古屋大学, 理学部, 助教授 (60004496)
藤田 純之佑 名古屋大学, 理学部, 教授 (80004266)
KAZUO Kashiwabara Nagoya University Associate Professor
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1990年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1989年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | ロジウム錯体 / イリジウム錯体 / ホスフィン錯体 / アルシン錯体 / X線構造解析 / 配位子場吸収スペクトル / 角重なり模型 / パイ共役二座配位子 |
研究概要 |
本国際学術研究(共同研究)においては、藤田・柏原・小島とGalsbolが主として実験的な側面を担当して新しいロジウム(III)、イリジウム(III)錯体の合成など行い(1、2)、山寺とSchafferが主として理論的な側面を担当して共役π軌道に基づく配位子場の角重なり模型による新しい解析を行った(3)。 1.ヒ素を配位原子とするキレ-ト配位子1,3ービス(ジメチルアルシノ)プロパン(dmap)を含む新しいロジウム(III)錯体、シスーおよびトランスー[RhCl_2(dmap)_2]^+を合成し、諸性質を検討するとともに、X線結晶解析によりその構造を決定した。ヒ素が互いにトランス配置にあるRhーAs結合距離は、Clーがトランス位にあるRhーAsよりも0.04〜0.07A長い。対応するホスフイン錯体では、この伸びは0.05〜0.09Aであり、Rh(III)に対するAsのトランス影響はPと同程度か、やや小さい。対応するCo(III)錯体と比較するためトランス異性体を合成し、構造解析した。RhーAsとCoーAsの結合距離の差は約0.09Aで、RhーClとCoーClの差(約0.11A)、およびアンミン錯体でみられるRhーNとCoーNとの差(0.10A)よりやや小さいが、多くのホスフィン錯体でみられるRhーPとCoーPとの差(約0.05A)よりかなり大きく、Rh(III)はPに対し特に強い親和性をもつことを示している。なお、対応するCo(III)のシス異性体は容易に熱異性化してトランス異性体になるが、Rh(III)の両異性体は熱・光に対して安定で異性化しない。一方、これらジアルシン錯体の配位子場吸収スペクトルを対応するジアミン、ジホスフィン錯体と比較し、5B(15)族配位原子のRh(III)に対する配位子場強度はP〉As〉Nの順になると結論した。Co(III)錯体についても同じ順が得られている。 2.コバルト、ロジウムと同族のイリジウム錯体の合成を試み、(2ーアミノエチル)ジメチルホスフィン(edmp)とIrCl_3・3H_20との反応により一種のジクロロ錯体をPF_6塩として単離し、X線構造解析によりtrans(Cl,Cl),trans(P,P)ー[IrCl_2(edmp)_2]PF_6と決定した。対応するCo(III)、Rh(III)錯体はtrans(Cl,Cl),cis(P,P)異性体のみ生成する。Ir(III)の場合はPのトランス効果による電子的要因よりも、大きいジメチルホスフィノ基による立体的要因が異性体の安定性に寄与していると思われる。この配置のためIrーPの結結合距離は2.325Aで、RhーPの2.252Aよりかなり長いが、IrーNはPのトランス影響を受けず2.097Aとなり、トランス影響を受けているRhーNの2.165Aより0.068A短い。 3. 山寺とSchafferは、数年来を行ってきた「π共役対称二座配位子の配位子場の角重なり模型による解析」に関する共同研究を完成し、共著論文をInorganic Chemistry誌に投稿した。この型の配位子をもつ錯体は、物質としては新しいものではないが、それらがもつ2個の配位原子のπ〓軌道(分子面に垂直なπ軌道)の間に相互作用があるという点に特徴があり、この点着目してそれらをを新しい型の錯体として捉え、解析を行つた。共役二座配位子の配位子場に対しては在来の角重なり模型が適用できないといわれていたが、分子軌道的な角重なり模型を用いることにより、すなわち、在来の角重なり模型のe_<π〓>パラメ-タ-を、2個の配位原子π〓軌道からなる2種類の群軌道(inーphaseの組み合わせによるψ軌道とoutーofーphaseの組み合わせによるχ軌道)に対応する2個の独立のパラメ-タ-e_ψとe_χで置き換かることにより、角重なり模型の基本的な考え方に変更を加えることなく、その配位子場を解析することができた。さらに、互いに等価な二つの方式、配位原子方式と配位子方式とを考案した。配位原子方式は上記のように対称性の異なる2種の配位子群軌道(ψとx)による摂動を考えるのに対して、配位子方式では、π共役対称2座配位子がその2回軸上に位置する単座配位子のようにふるまい、中心原子のdπおよびdδ軌道に摂動を与えると考えるものであり、eパラメ-タ-の値が中心原子と2個の配位原子との間の結合角に無関係になるという点に特徴がある。ただし、配位子のσ軌道による摂動は配位原子の座標の関数となるので、配位原子方式のほうが実用的であることが多い。
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