研究課題/領域番号 |
01044134
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
西長 明 大阪工業大学, 工学部, 教授 (80025882)
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研究分担者 |
BERND Speise チュービンゲン大学, 化学教室, 教授
ANTON Rieker チュービンゲン大学, 化学教室, 教授
田嶋 邦彦 愛媛大学, 理学部, 助手 (50163457)
大矢 博昭 京都大学, 理学部, 助教授 (00025389)
石津 和彦 愛媛大学, 理学部, 教授 (60036184)
OHYA-NISHIGUCHI Hiroaki Kyoto University, Faculty of Science
NISHINAGA Akira Osaka Institute of Technology, Faculty of Engineering
SPEISER Bernd Tuebingen University, Institute of Organic Chemistry
RIEKER Anton Tuebingen University, Institute of Organic Chemistry
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
6,600千円 (直接経費: 6,600千円)
1990年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1989年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
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キーワード | コバルト錯体 / シッフ塩基錯体 / オキシゲナ-ゼモデル / 過酸化物錯体 / 三元錯体 / 酸素酸化 / 錯体の酸化還元電位 / 電子移動 |
研究概要 |
1.研究課題に基づくコバルトシッフ塩基錯体(CoSB)の研究に関して以下のような成果を得た。CoSBのオキシゲナ-ゼ型触媒活性種の新規の反応として、オレフィンのNaOClによるエポキシ化反応アルキン類への酸素分子による一原子酸素添加反応、およびヒドロ過酸化物によるアミン類の脱水素反応を見出した。これらの反応はCoSBの構造に大きく影響されるので,種々の構造要素をもつCoSBを合成し、電気化学的手法により酸化還元電位(E°)を測定した。E°はCoSBの構造と密接に関連しており、電子吸引性置換基,嵩い置換基、ないし非平面性コンホメ-ションをもつCoSBはE°が正側にシフトすることがわかった。これらのCoSBの触媒活性とE°との相関については、例えば、NaOClによるオレフィンのエポキシ化反応においては、エポキシ化活性種が水溶性の次亜塩素酸イオンを配位したCoSBのアニオン錯体種であって、この活性種はE°が正側にあるものほど生成しやすいことが明らかとなった。一方、酸素分子によるアルケン類やアルキン類の一原子酸素添加反応においては、CoSBの触媒能とE°とは相関せず、錯体の形が支配的になることを明らかにした。ヒドロ過酸化物によるアミン類の脱水素反応に対するCoSBの触媒作用はP450の作用のモデルとなるものであるが、触媒反応活性種はペルオキソコバルト(III)種であって、その熱的分解によって生じる酸素ラジカル種が基質N原子から一電子ひき抜く反応であり、高スピンCoSBが触媒不活性であることなどを明らかにした。ジオキシゲナ-ゼ型反応のモデル中間体となるフラボノラコ-トコバルト(III)錯体の単結晶化に成功し、X線結晶解析の結果、基質アニオンがCo中心に二座配位している状態では酸素酸化に不活性であるが,配位性溶媒中では基質アニオンが単座配位形となり、これが酸素酸化活性種であることを溶液NMRの解析により明らかにした。 2.CoSBおよびCoーポリアミン(PA)錯体のカテコ-ルを基質とするオキシゲナ-ゼ型触媒活性発現について分光磁気学的および電気化学的にアプロ-チした結果,Co(II)形とCo(III)形とでは酸素と基質の活性化の順序が異なり、例えば、Co(II)形から出発すると、まず錯体から酸素への一電子移動が起こってCo(III)ーO_2^ー種を生じ,これが基質よりプロトンを受容すると同時に、生成した基質アニオンからCo(III)中心への電子移動を伴って、結果としてヒドロペルオキソ-Co(III)ー基質セミキノン三元錯体中間体を形成することがわかった。また,Co(III)(PA)を用いると、まず基質かアニオン配位子ヘプロトンが移動し、ついで電子移動が起こって常磁性中間体としてCo(II)ーセミキノン錯体が生成することが磁化率測定により確認された。この中間体に酸素が反応して各種生成物が得られる。触媒サイクルではこのような電子移動を伴うプロセスで反応が進行すると結論できる。 3.オキシゲナ-ゼ反応の重要な反応中間体として想定されているヘムー過酸化物錯体について、その構造と分光学的パラメ-タ-に関する系統的情報が平成1年〜平成2年の研究で蓄積されたので,この分光学的指標に基づいて、ヘムー過酸化物錯体が生成する条件を探索した。この過酸化物錯体は鉄ポルフィリン錯体が関与する分子状酸素の活性化反応系でも生成することを見出した。即ち、鉄2価酸素錯体の低温溶液にアスコルビン酸ナトリウムを加えたところ、六配位形ヘムー過酸化水素錯体が生成することがわかったのである。この結果はP450が酸素を還元酵素の共存下で活性化する反応の化学モデルとして重要である。また,スカト-ルの二原子酸素添加反応系からは反応中間錯体として、合成ヘムー酸素ー基質三元錯体構造をもつ六配位形ヘムー有機過酸化物錯体の生成をESRにより明らかにした。この過酸化物錯体はトリプトファンジオキシゲナ-ゼ反応のモデル中間体として評価できる。 以上、オキシゲナ-ゼモデル錯体として挙動するCoおよびFeの各種錯体の触媒活性発現とその機構についての分光学的および電気化学的アプロ-チにより、酵素反応を理解するための基礎となる重要な知見が得られた。さらに,この共同研究を通じて、新しいテ-マが各研究グル-プに芽生え展開されつつあることは、この国際学術研究の多大の成果として特筆に価する。
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