大型スパレ-ションパルス中性子源を用いた中性子散乱による物質の動的構造研究

• 研究課題/領域番号: 01044139
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 高エネルギー物理学研究所
• 研究代表者: 渡辺 昇 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 教授 (40005286)
• 研究分担者: 伊藤 晋一 日本学術振興会, 高エネルギー物理学研究所, 特別研究員 (00221771) ; 新村 信雄 東北大学, 理学部, 助教授 (50004453) ; 稲葉 章 大阪大学, 理学部, 講師 (30135652) ; 武田 定 (武山 定) 大阪大学, 理学部, 助手 (00155011) ; 神山 崇 筑波大学, 物質工学系, 講師 (60194982) ; 山田 和芳 東北大学, 理学部, 助手 (70133923) ; 加倉井 和久 東京大学, 物性研研究所, 助教授 (00204339) ; 田島 圭介 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授 (70004439) ; 恒川 信 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (00023218) ; 大嶋 健一 筑波大学, 物質工学系, 助教授 (70109271) ; 柴田 薫 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (60183836) ; 古坂 道弘 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 助手 (60156966) ; 新井 正敏 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 助手 (30175955) ; 池田 進 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 助教授 (80132679) ; 三沢 正勝 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 助教授 (80005941) ; 金谷 利治 京都大学化学研究所, 助教授 (20152788) ; 神木 正史 東北大学, 理学部, 助教授 (30004451) ; 浅野 肇 筑波大学, 物質工学系, 教授 (90005934) ; 遠藤 康夫 東北大学, 理学部, 教授 (00013483) ; 池田 宏信 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 教授 (90013523) ; TAYLOR A.D. ラザフォードアンプルトン研究所, 主任研究員 ; WILLAMA W.G. ラザフォードアプルトン研究所, 主任研究員 ; SHIBATA K. Institute for Materials Research, Tohoku Univ. ; FURUSAKA M. BSF, National Laboratory for High Energy Physics ; ARAI M. BSF, National Laboratory for High Energy Physics ; IKEDA S. BSF, National Laboratory for High Energy Physics ; MISAWA M. BSF, National Laboratory for High Energy Physics ; KANAYA T. The Institute for Chemical Research, Kyoto Univ. ; ASANO H. Institute of Materials Science, Univ. of Tsukuba ; KOHGI M. Faculty of Science, Tohoku Univ. ; IKEDA H. BSF, National Laboratory for High Energy Physics ; ENDOH Y. Faculty of Science, Tohoku Univ. ; OHOSHIMA K. Institute of Applied Physics, Univ. of Tsukuba ; ITOH S. BSF, National Laboratory for High Energy Physics ; TAKEDA S. Faculty of Science, Osaka Univ. ; TAJIMA K. Faculty of Science and Technology, Keio Univ. ; YAMADA K. Faculty of Science, Tohoku Univ. ; KAKURAI K. The Institute for Solid State Physics, Univ. of Tokyo ; WILLAMS W.G. ラザフォードアプルトン研究所, 主任研究員 ; WILLIAMS W.G ラザフォード, アプルトン研究所, 主任研究員 ; 冨吉 昇一 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (50005922) ; 満田 節生 東京大学, 物性研究所, 助手 (90183962) ; 増田 康博 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 助手 (60150009) ; 梶 慶輔 京都大学, 化学研究所, 教授 (00026072)
• 研究期間 (年度): 1989 – 1991
• 研究課題ステータス: 完了 (1991年度)
• 配分額: 18,300千円 (直接経費: 18,300千円); 1991年度: 6,400千円 (直接経費: 6,400千円); 1990年度: 6,400千円 (直接経費: 6,400千円); 1989年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
• キーワード: 中性子散乱 / スポレ-ションパルス中性子 / チョッパ-型中性子分光器 / 高エネルギ-(磁気)励起 / 非調和水素ポテンシャル / 低次元反強磁性体 / ガラスの動的構造 / 日英中性子散乱研究協力 / 磁気励起 / 高エネルギ-励起 / 液体 / 非晶質 / 超伝導 / 低次元物質

研究概要

本研究は「連合王国科学工学会議(SERC)及び日本高エネルギ-物理学研究所(KEK)間のSERCラザフォ-ド・アプルトン研究所(RAL)スポレ-ション中性子源(ISIS)を用いた中性子散乱研究に関する協定」(1986年12月締結)に基づく研究を実施することを目的としている。この協定に基づき、我々は我が国の予算により高性能チョッパ-型中性子分光器″MARI″をISISに設置し、これまでの原子炉中性子では達成できなかった新しい中性子散乱研究の開拓を目指した。具体的には、ISISより得られる非常にパルス幅の短い世界最大強度の熱外中性子ビ-ムを用いてはじめて可能となる凝集体の高エネルギ-励起及び液体・
非晶体の動的構造の測定を2つの研究の柱とした。
まず研究の第一段階として、RALの研究者の多大の協力を得てMARIの建設が行なわれた。建設は1986年に開始、本研究の第1年次である1989年度に完成。第2年次よりオンビ-ムコミッショニングに入り、世界最高性能を確認した。つづいて予備実験に入り、最終年次には本格的に中性子散乱研究を実施、初期の目的を達成できた。総ての実験は、我が国の中性子研究者より広く公募または英国の研究者と共同で申請し、我が国及びSERCでの課題採択委員会で採択されたものについてのみ実施された。
次に研究成果について述べる。凝集体の高エネルギ-励起の代表例として金属水素化物中の水素原子の非調和ポテンシャル及び波動関数の研究(S.Ikeda他)がある。ZrH_2及びNbH_<0.3>について水素局在モ-ドを励起エネルギ-数百meVまで種々の散乱角で測定し、散乱強度の運動量変化依存性を求め、これをモデル計算と比較することにより、これまで考えられて来たNbH_<0.3>の非調後ポテンシャルモデルを検証した。第3年次には代表的な強誘電体KDPの相転移に重要な係りを持つ水素結合を狙う水素原子について同様の研究がなされ、非常に重要な結果が得られた。
高エネルギ-磁気励起については非常に多くの研究がなされた。まず希土類元素を含む化物合には“重い電子系"あるいは濃厚近藤物質と呼ばれるものがあり、その磁性についてはあまり明らかでない。これらの物質の結晶場分裂スペクトルの観測は、その磁性の基本的理解の重要な手がかりを与えるため、CeSi_x系及びYbN系等について測定がなされ、新しい知見が得られた(M.Kohgi他)。低次元磁性の研究は磁性の基礎的な理解を深めるうえで重要で、その高エネルギ-磁気励起の実測が持たれていた。先ず一次元反強磁性体KFeS_2単結晶の測定がなされ、励起エネルギ-2百数十meVまでのスピン波の分散関係かはじめて観測された。次に準2次元反強磁性体としてLa_2NiO_4(スピンS=1)及びLa_2CuO_4(S=1/2)の単結晶試料について高エネルギ-磁気励起が調べられた。前者では約130meVまでスピン波が存在することがはじめて確認され、その磁気相互作用についての理解が深まった。後者は第一世代の高温超伝導体の親物質で、高エネルギ-磁気励起が超伝導機構に深い係りをもつと考えられ、その測定が持たれていたが、散乱強度はスピンの大きさから予想されるより遥かに小さく、そのことが超伝導機構に関係があるのではないかとも考えられつつある。これまで得意でないとされて来たチョッパ-型分光器による単結晶試料の磁気励起の測定が、低次元磁性体の場合には極めて効率よく行なえることがわかり、今後のこの方面の研究の進展が期待される。
液体・非晶体の構造研究は通常の中性子回折では一次元的デ-タしか得られず、短距離構造しか決定できない。中性子非弾性散乱により動的構造が求まると、その三次元的運動の解析より三次元構造に関する知見が得られ、これらの物質系を理解するうえで極めて重要な中距離構造が明かとなる。基本的なガラスであるSiO_2について詳細な動的構造S(Q,ω)が観測され、三次元構造が明かとなりつつある(M.Arai他)。同様の研究が金属・非金属系ガラスPd_<0.8>Si_<0.2>及びPd_<0.8>Ge_<0.2>についてなされ、動的構造について重要な見知が得られつつある。そのほかにも重要な研究があるが添付の発表論文を参照されたい。

研究成果

• [文献書誌] M.Kohgi: "Crystal Field Excitations in CeSi_x" Physica B. 163. 137-140 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Kohgi: "Competition between the Kondoh Effect and RKKY Interactions in CeSi_x" Physica B. 169. 501-502 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Ohoyama: "Anomalous Crystal Field Splitting in YbN" Physica B. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Arai: "High Resolution S(Q,E)Measurement on gーSiO_2" Physica B. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] D.Welz: "High Energy SpinーWaves in the Chain Antiferromagnet KFeS_2" Physica B. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Yamada: "TwoーDimensional Antiferromagnetism and Spin Dynamics in ″2ー1ー4″ Oxides" Physica B. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Arai: "Phonon Density of States of La_<1.85>Sr_<0.15>Cu_<1ーx>Zn_xO_4(x=0,0.02)" Physica B. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] S.Ikeda: "Hydrogen Wave Functions in the Metal Hydrides ZrH_2 and NbH_<0.3>" J.Phys.Condens.Matter. 2. 4675-4684 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Yamada: "Comlplete TwoーDimensional Antiferromagnetic SpinーWave Dispersion Relation of La_2NiO_4 Determined by Chopper Spectrometer Installed at the Pulsed Nuetron Source" J.Phys.Soc.Jpn.4. 1197-1200 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Arai: "Performance of Chopper Spectrometer" Proc.11th Meeting Int.Collab.on Advanced Neutron Sources(ICANSーXI)(Tsukuba,22ー26 Oct.1990). 644-654 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Kakurai: "Magnetic Excitations in Quasi OneーDimensinal Antiferromagnets" Physica B. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] S.Tomiyoshi: "Magnetic Excitations in Mn_3Pt" Physica B. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] S.Ikeda: "High Resolution Neutron Spectrometer LAMー80ET and Rotational Tunnelling in 4ーMethylpyridine NーOxide" J.Phys.Soc.Jpn.60. 3340-3350 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M. Kohgi: "Crystal Field Excitations in CeSi_x" Physica B. 163. 137-140 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M. Kohgi: "Competition between the Kondoh Effect and RKKY Interactions in CeSi_x" Physica B. 169. 501-502 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K. Ohoyama: "Anomalous Crystal Field Splitting in YbN" Physica B.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M. Arai: "High Resolution S (Q, E) Measurement on g-SiO_2" Physica B.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] D. Welz: "High Energy Spin-Waves in the Chain Antiferromagnet KFeS_2" Physica B.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K. Yamada: "Two-Dimensional Antiferromagnetism and Spin Dynamics in "2-1-4" Oxides" Physica B.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M. Arai: "Phonon Density of States of La_<1.85>Sr_<0.15>Cu_<1-x>Zn_xO_4(x=0, 0.02)" Physica B.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] S. Ikeda: "Hydrogen Wave Functions in the Metal Hydrides ZrH_2 and NbH_<0.3>" J. Phys. Condens. Matter. 2. 4675-4684 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K. Yamada: "Complete Two-Dimensional Antiferromagnetic Spin-WaveDispersion Relation of La_2NiO_4 Determined by Chopper Spectrometer Installed at the Pulsed Nuetron Source" J. Phys. Soc. Jpn.4. 1197-1200 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M. Arai: "Performance of Chopper Spectrometer" Proc. 11th Meeting Int. Collab. on AdvancedNeutron Sources (ICANS-XI) (Tsukuba, 22-26 Oct. 1990). 644-654
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K. Kakurai: "Magnetic Excitations in Quasi One-Dimensinal Antiferromagnets" Physica B.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] S. Tomiyoshi: "Magnetic Excitations in Mn_3Pt" Physica B.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] S. Ikeda: "High Resolution Neutron Spectrometer LAM-80ET and Rotational Tunnelling in 4-Methylpyridine N-Oxide" J. Phys. Soc. Jpn.60. 3340-3350 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M.Kohgi: "Crystal Field Excitations in CeSi_x" Physica B. 163. 137-140 (1990)
• [文献書誌] M.Kohgi: "Competition between the Kondoh Effect and RKKY Interactions in CeSi_x" Physica B. 169. 501-502 (1991)
• [文献書誌] K.Ohoyama: "Mnomalous Crystal Field Splitting in YbN" Physica B. (1992)
• [文献書誌] M.Arai: "High Resolution S(Q,E)Measurement on g-SiO_2" Physica B. (1992)
• [文献書誌] D.Welz: "High Energy Spin-Waves in the Chain Antiferromagnet KFeS_2" Physica B. (1992)
• [文献書誌] K.Yamada: "Two-Dimensional Antiferromagnetism and Spin Dynamics in "2-1-4" Oxides" Physica B. (1992)
• [文献書誌] M.Arai: "Phonon Density of States of La_<1.85>Sr_<0.15>Cu_<1-x>Zn_xO_4 (x=0,0.02)" Physica B. (1992)
• [文献書誌] S.Ikeda: "Hydrogen Wave Functions in the Metal Hydrides ZrH_2 and NbH_<0.3>" J.Phys.Condens.Matter. 2. 4675-4684 (1990)
• [文献書誌] K.Yamada: "Complete Two-Dimensional Antiferromagnetic Spin-Wave Dispersion Relation of La_2NiO_4 Determined by Chopper Spectrometer Installed at the Pulsed Nuetron Source" J.Phys.Soc.Jpn.4. 1197-1200 (1991)
• [文献書誌] M.Arai: "Performance of Chopper Spectrometer" Proc.11th Meeting Int.Collab.on Advanced Neutron Sources(ICANS-XI)(Tsukuba,22-26 Oct.1990). 644-654 (1990)
• [文献書誌] K.Kakurai: "Magnetic Excitations in Quasi One-Dimensinal Antiferromagnets" Physica B. (1992)
• [文献書誌] S.Tomiyoshi: "Magnetic Excitations in Mn_3Pt" Physica B. (1992)
• [文献書誌] S.Ikeda: "High Resolution Neutron Spectrometer LAM-80ET and Rotational Tunnelling in 4-Methylpyridine N-Oxide" J.Phys.Soc.Jpn.60. 3340-3350 (1991)