研究課題/領域番号 |
01045015
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
鈴木 紀雄 滋賀大学, 教育学部, 教授 (90025354)
|
研究分担者 |
BATTERSON Te Michigan State University, Associate
MCNABB Clare Michigan State University, Professor
D'ITREI Fran Michigan State University, Professor
板倉 安正 滋賀大学, 教育学部, 教授 (20027824)
遠藤 修一 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30111884)
川嶋 宗継 滋賀大学, 教育学部, 教授 (90093161)
|
研究期間 (年度) |
1989 – 1991
|
研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
|
配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
|
キーワード | ヒュウロン湖 / サギナウ湾 / 湖沼沿岸帯 / 水位変化・湖流 / イオン濃度の変化 / 硫酸還元 / Scirpus americanus / 付着藻類の総生産量 / ヒュ-ロン湖 / サギノ-湾 / 水位変動 / イオン成分濃度 / クロロフイル濃度 / 電気伝導度 / 付着藻類の総生産 |
研究概要 |
北米にある五大湖の中で、ヒュ-ロン湖の西南部に存在するサギナウ湾に広大な湿地帯がある。本共同研究ではここを調査地点に選んだ。サギナウ湾の面積は、この湾だけでも琵琶湖の4.3倍もあり、琵琶湖の沿岸帯の水草帯(ヨシ群落帯)の研究の対象にしてきた矢橋湾の面積の5000倍も大きい。琵琶湖沿岸帯では抽水植物植物としては、Phragmites communisが優占種で、サギナウ湾では、Scripus americanus(ホタルイの仲間)が優占種である。 本共同研究では、サギナウ湾の沿岸帯におけるイグサ地帯の物理的環境(水位変動、連続水温ならびに濁度、電気伝導度など)、化学的環境(溶存主要イオン濃度及びSSの元素濃度、栄養塩の分析など)、生物的環境(沈水植物の種類構成、水草地帯内における付着生物の生産量と分解量、有機物分解による酸素の変化など)の測定を行い、この水域における湿地帯(水草地帯)の特徴を把握した 同時に、空中からのリモ-トセンシングによって、この湿地帯周辺の物理的環境の状況を画的にも把握することに努めた。 また、季節的な相違を見るため、抽水植物が繁茂する夏期だけでなく、春期においても調査を行なった。 ヒュウロン湖サギナウ湾東南部における湿地帯(水草地帯)で、沿岸から垂直の方向に50mずつ調査地点を設定し、岸から沖に向けて600mまでの範囲にわたって、物理的環境、化学的環境ならびに生物の状況などについての水平変化の測定を行った。 夏期においては、沿岸に直角な垂直線上において、明らかに水質に顕著な勾配が見られた。岸側から沖に向かうにつれ、岸側の濁度が著しく低いのに対して沖側は高い濁度をしめした。逆に、水中溶存化学成分の総合的な量の指標となる電気伝導度は岸側では高い値を示し(600μS)、沖側は低い電気伝導度(300μS)をしめした。この湿地帯では大きな水位の変動がおこる(琵琶湖では多くは1日の変動は2ー3cmであるのに対して、ここでは1日の変動が普通10cmにもなる)。水位変動の周期には、24時間の周期と3時間の2つの周期が検出された。分析の結果、前者の周期は湖陸風による風の影響で現れたもの、後者は湾に直角方向におこる静振によるものであると結論づけた。陸側から沖側の方向に水質の急激な変化が見られ、そのフロントは水位が上昇すると岸側に、水位が低下すると沖側に移動することをみた。この流速は普通、毎秒2ー3cmであった。ときどき、この地方でもハリケ静ン風の嵐が起こるが、このときには水位の上昇が急に起こりしかもその規模は大きい。そのため、湿地帯の沖側と岸側の水がよく混合する。このときの流速は水草地帯内で10/秒におよんだ。 この地帯は、Scripus americanusが優占しているが、ここにつく付着藻類のクロロフイル量は沖側にくらべて岸側の方が茎の表面積あたりでも、湖底面積あたりでもともに有意に高かった。茎につく藻類の総生産速度の活性については、岸からやや離れたところがもっとも高かった。分解量は琵琶湖の矢橋沿岸帯より2ー3分の1少ない。生産量は矢橋沿岸帯より変動の幅が大きい。これは水草地帯の奥行きが大きい事に由来する。クロロフイル量は夏期(7ー8月)では沖に行くほど急激に高くなるが、春期(5月)では、全く逆の傾向がみられ沖に行くほどクロロフイル量は低くなる。夏期においては、密度の高いサンカクイが生育するため、水草地帯の内部の水の交流が少ない。そのため、岸側にう多く存在する植物の腐食物によって、夜間、特に早朝においては、水中の酸素量は著しく減少する。沖側の湿地帯内の部分と比較して、岸側の湿地帯内の硫酸イオン濃度は低くなっている。これは、Mg^<++>、Ca^+、Cl^ー、その他のイオンが湿地帯内の沖側にいくにつれて低くなるのとは対照的である。この理由は、夜間、低酸素(おそらく湖底直上では無酸素状態)になるので、硫酸イオンが還元状態になっているためと思われる。また、他のイオンが岸側で多いのはこの辺では浅いため、水の蒸発によって水が失われイオンが濃縮されて濃度が高くなったためと考えられる。同時に湿地帯内部の水が沖側と岸側の間で交流がないこともその原因であろう。
|