研究分担者 |
楊 有林 蘭州沙漠研究所, 工程師
こん 自立 蘭州沙漠研究所, 副教授
王 一謀 蘭州沙漠研究所, 副教授
宝音 烏力吉 蘭州沙漠研究所, 教授
朱 震達 蘭州沙漠研究所, 所長 教授
古川 郁夫 鳥取大学, 農学部, 助教授 (50032313)
田熊 勝利 鳥取大学, 農学部, 教授 (40032297)
河野 洋 鳥取大学, 農学部, 教授 (10032054)
YANG Youlin Engineer, Institute of Desert Research, Academia Cinica
CONG Zili Associate Professor, Institute of Desert Research, Academia Cinica
WANG Yimou Associate Professor, Institute of Desert Research, Academia Cinica
BAOYIN Wuliji Professor, Institute of Desert Research, Academia Cinica
ZHU Zhenda Director and Professor, Institute of Desert Research, Academia Cinica
〓 自立 蘭州沙漠研究所, 副教授
宝音 鳥力吉 蘭州沙漠研究所, 教授
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研究概要 |
本研究は,中国東部の湿潤,半湿潤および半乾燥型河岸砂地における砂漠化防止ならびに農業開発に関する問題点の探索を目的として,3カ年計画で行った大学間協力研究である。 1.研究実施経過 平成元年には湿潤型砂地として長江下流域の南昌地区,平成2年には半湿潤型砂地として黄河下流域の禹城・夏津地区,北京市郊外氷定河流域の大興地区,および半乾燥型砂地として東北部の奈曼地区を調査した。平成3年には蘭州沙漠研究所でセミナ-を開催し,また沙坡頭試験站を視察した。一方,中国側研究分担者を3年間に延べ4名日本に招いて鳥取県内砂丘地を調査すると共に,平成3年には鳥取大学でセミナ-を催した。 2.現地調査結果 (1)南昌地区 南昌市郊外のガン江流域砂地面積は南昌市だけで8,300haに達する。北緯28゚25',年降水量1,600mmでその85%は1〜7月に降る。年平均気温は17.3℃で鳥取より約3℃高い。蘭州沙漠研究所南昌試験站を拠点に,砂丘地の植林や果樹,野菜など換金作物を中心とした農業利用が進められている。温度や降水量に恵まれ,立派な農園も散見されるが,砂地の農業開発はまだその緒についた段階である。 (2)禹城・夏津地区 山東省の黄河流域砂地は123万haもあり,風食被害耕地は74万haに達する。その代表地点の禹城市郊外に蘭州沙漠研究所禹城試験站がある。北緯37゚08',年平均気温は13.1℃,年降水量616mmで6〜8月にその68%が降る。禹城県では海拔20m前後の沖積平原に1,098haの砂荒地がある。砂地利用計画は,自然条件に基づいて4区の分けて進められている。現在887haが開拓され150haの果樹園が完成している。夏津市は禹城の西約80kmにあり,夏津県内にある18,700haの砂地のうち8,670haが改良されている。しかし,春の風砂害と夏の水食によって作物生産は極めて不安定である。 (3)北京地区 北京は北緯約40゚,年平均気温12.5℃,年降水量641mmでその75%が6〜8月に集中する。北京南部の氷定河その他の河岸に59,000haの砂地がある。氷定河沖積砂地に大興試験站が1987年に設置され,各専門の研究者を配置して園芸作物とくに果樹に重点を置いた近郊園芸地帯の開発を目指している。 (4)奈曼地区 北緯約43゚,降水量340〜450mm,海拔250〜570mの起伏に富んだ奈曼県は,総面積8,159km^2でそのうち62%は砂地である。春の強風,夏の集中降雨,秋の冷涼と快晴,冬の酷寒という厳しい地帯である。自然条件,社会経済状態によって3つの経済区に分けて農業開発を行っているが,砂漠化土地は県全体の60%に達し,現在も砂漠化が進行中である。 3.日本の砂丘農業調査 中国側研究分担者を招待して鳥取県における砂丘地の開発と農業利用の実態を調査すると共に,蘭州沙漠研究所において日本側分担研究者から「日本における砂丘とその農業利用」について詳しく紹介した。その結果,高度に発達した日本の砂丘農業が中国の研究者に強い感銘を与えた。 4.まとめ 中国東部の河岸砂地4地区の平均気温をみると,南昌は日本南部,禹城と北京は日本の東北地方,奈曼は北海道とそれぞれ大差がない。雨量は南昌を除くと日本の1/3〜1/4に過ぎないが,夏雨型であるため植物生育に有利である。砂漠化は,ことの奈曼では深刻であり,他の地区でも風砂害や水食が絶えない。各地区とも砂地の農業開発が推進されており,果樹などの換金作物の生産が重視されている。しかし,砂防林の造成,潅・排水施設の整備,土地改良,作物の選択と栽培技術等のいずれも極めて不充分である。日本の海岸砂丘の砂防造林,砂丘地農業の発展経過は,中国の河岸砂地の砂漠化防止と農業開発にとって大いに参考になると考えられる。
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