内蒙古における農牧生産技術の進展過程に関する研究

• 研究課題/領域番号: 01045021
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 大学協力
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 長堀 金造 岡山大学, 農学部, 教授 (30032973)
• 研究分担者: とん 偉力 内蒙古農牧学院, 講師 ; 道 爾吉 内蒙古農牧学院, 講師 ; 達 来 内蒙古農牧学院, 講師 ; 張 風嶺 内蒙古農牧学院, 講師 ; 劉 徳福 内蒙古農牧学院, 副教授 ; 桑 以琳 内蒙古農牧学院, 副教授 ; 張 尓ちい 内蒙古農牧学院, 副教授 ; 布 和 内蒙古農牧学院, 副教授 ; 文 恒 内蒙古農牧学院, 副教授 ; が 尓廸 内蒙古農牧学院, 副教授 ; 馬 鶴林 内蒙古農牧学院, 副教授 ; 張 樹春 内蒙古農牧学院, 副院長 ; 奥田 潔 岡山大学, 農学部, 助教授 (40177168) ; 永井 明博 岡山大学, 農学部, 助教授 (80093285) ; 宮本 拓 岡山大学, 農学部, 助教授 (00093708) ; 天谷 孝夫 岡山大学, 農学部, 助教授 (80033265) ; 佐藤 勝紀 岡山大学, 農学部, 教授 (10033325) ; 内田 仙二 岡山大学, 農学部, 教授 (80032986) ; HENG Wen Associate Professor, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandr ; ERDI Ga Associate Professor, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandr ; LIN Ma He Associate Professor, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandr ; SHUCHUN Zhang Vice President, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandry ; LI Tong Wei Lecturer, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandry ; LING Zhang Feng Lecturer, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandry ; ERJI Dao Lecturer, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandry ; HE Bu Associate Professor, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandr ; FU Liu De Associate Professor, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandr ; LIN Cong I Associate Professor, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandr ; LAI Da Lecturer, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandry ; ERQI Zhang Associate Professor, Inner Mongolia Institute of Agriculture and Animal Husbandr ; 張 尓〓 内蒙古農牧学院, 副教授 ; 嗄 尓廸 内蒙古農牧学院, 副教授 ; 長 鶴林 内蒙古農牧学院, 副教授
• 研究期間 (年度): 1989 – 1991
• 研究課題ステータス: 完了 (1991年度)
• 配分額: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円); 1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円); 1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円); 1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
• キーワード: 中華人民共和国 / 内蒙古自治区 / 農牧調査 / 草原土壌 / 草原草生 / 家畜育種・繁殖技術 / 家畜飼養技術 / 乳加工技術 / 家畜育種技術 / 家畜暁飼養技術

研究概要

中華人民共和国内蒙古自治区は広大な温帯ステップ地帯として概括できるが、東から西に向かうに従い乾燥度が増し、同時に土壌の肥沃度も低下していくという成帯的差異を示し、植生の質も西ほど落ちるという自然環境下にある。これらの条件を総合的に考慮し、本研究では全自治区を3地域に区分し、各々から代表的な地区を選抜し毎年1カ所ずつ3年間にわたり土壌、植生、家畜、乳製品等に付いて、総合調査を実施した。
1年目の平成元年度は10月18日から31日まで、内蒙古西部乾燥地域である巴彦〓尓盟内の農牧地帯3カ所に於て調査を実施した。付近は年間降雨量が200mm以下の極度に乾燥した地域にあるが、陰山山脈の南北では全く異なる農牧経営が行われていた。先ず、陰山山脈南部一帯では黄河から引水に全面的に依存した農業経営が実施され、上流の銀川平原と共に「塞上の江南」と並び称される豊かな農業地帯を形成している。しかし、排水条件が不良な地区では激しい蒸発作用に起因する塩分集積のために放棄された農地が広く見られ土壌状態の劣化が著しく、そこでは本来の形態である畜産経営も不可能な状況にある事が明らかとなった。よって、荒廃地の修復と新たな荒廃地の発生を防止することが、今後の極めて重要な研究課題である。一方、陰山山脈北部一帯に広がる烏拉特中旗の草原では、貧弱な土壌特性に起因する劣悪な草生を克服した牧畜経営を目指し、山羊を中核とした極めて特徴的な飼育形態が取られていた。そこでは、草地資源開発のための「草庫倫」や水資源確保のための地下水開発等、独自の経営形態確立を目指した対策が実施され、今後の研究展開に必要な情報が収集できた。
2年目の平成2年度は7月25日から8月9日まで、内蒙古自治区の中間に位置する錫林郭勒盟内の西烏珠穆沁旗と錫林浩特市周辺の農牧地帯3カ所に於て調査を実施した。先ず、土壌については、植生の差に合わせ西烏珠穆沁旗巴音胡碩〓木の南斜面1カ所、中国科学院白音錫勒定位站の2カ所から採土した。前者は、地下茎のよく発達した草本類が繁茂した栗色土地帯であり、90cm以深にようやく石灰層が出現する優れた土性であった。後者は、標高1100〜1250mの高原地帯にあり、羊草と大針茅の草場が暗栗色土地帯に広がる優良牧地であった。植生調査は土壌調査と連動して進められ、これら草原は土壌条件や気象条件と密接な関連を有していると共に、家畜の放牧方法など草地利用技術により影響されていることが確認された。ところで、この地域は内蒙古の伝統が最も良く保存されているところと言われ、乳製品調査においても、西欧的乳加工体系とは異なる独特の製法で多様な伝統的乳製品が作られていた。入手した内蒙古原産チ-ズ「ホロ-ト」の微生物学的性状の検討結果は、内蒙古の乳加工技術発展の一助になると思われる。
3年目の平成3年度は7月28日から8月8日まで、内蒙古東北部にある呼倫貝尓盟内の海拉尓市周辺及び額爾古納右旗に於て調査した。先ず、土壌については、海拉尓市南20〜25kmの鄂温克族自治旗内草地2カ所と額爾古納右旗三河西15km付近の林区内草地1カ所から採土した。前者は主要道沿いに在るため草生もやや悪く、土壌もこれと相互に関連して肥沃度に乏しく一部には塩類の集積地も見られたが、道路から離れるに従い植生も回復することが分かった。後者は大興安嶺西麓の草生が豊かな一大牧畜生産地内に位置し、土壌の物理・化学性の優れた暗栗色土が広く分布することが確認された。よって調査地周辺土壌は十分生産性が高いといえ、適切な管理と使用により今後も内蒙古における代表的な農牧生産基地で在り続けると確信された。一方、畜産関係の調査の結果、この地域で放牧飼育されている主な家畜の品種は三河馬、三河牛、蒙古羊であった。これらの在来品種はいずれも内蒙古の気候、風土に適応し、また耐寒性、耐粗飼性、抗病性に富むことから、貴重な遺伝資源になるものと思われる。しかしこれらの家畜の繁殖は自然交配によっており、計画的な育育種が行われていない。特に、蒙古牛と外国種との交雑によって作られた三河牛では体型、毛色は様々であり、外貌の遺伝的な均一性を欠いていた。今後、人工授精や受精卵移植などの技術の導入によって家畜の遺伝的改良が達成できるものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] 天谷 孝夫: "中国ホロンバイル草原土の物理性と植生" 農業土木学会大会講演要旨集. 324-325 (1989)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 長堀 金造: "1990年度国際学術研究調査実施報告" 日本モンゴル学会紀要. 21. 149 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 宮本 拓: "内蒙古原産チ-ズ,ホロ-トの製法と分離菌の性状" 日本畜産学会大会講演要旨集. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Takao AMAYA: "Physical Properties and Grass Vegetation of Soils in Hulunbuir League, China" Japanese Society of Irrigation Drainage and Reclamation Engineering (Annual Meeting Abstracts). 324-325 (1989)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kinzo NAGAHORI: "Reports on A Grant under The Monbusho International Scientific Research Program in 1990" Bulletin of The Japan Association for Mongolian Studies. 21. 149 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Taku MIYAMOTO: "Production Techniques of Inner Mongolian Cheese, Hurood and Characteristics of Bacterial Isolates" The Japanese Society of Zootechnical Science (Annual Meeting Abstracts). (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] 宮本 拓: "内蒙古原産チ-ズ,ホロ-トの製法と分離菌の性状" 日本畜産学会大会講演要旨集. (1992)