研究分担者 |
袁 謀村 湘潭大学, 化学系, 講師
成 昌梅 湘潭大学, 化学系, 講師
陽 年発 湘潭大学, 化学系, 講師
内尾 康夫 (内尾 康人) 鹿児島大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (10093733)
岩川 哲夫 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (10041245)
長谷 綱男 鹿児島大学, 名誉教授 (70041209)
NENHATSU Yoo Lecturer, Department of Chemistry, Shootan University.
BOOSON En Lecturer, Department of Chemistry, Shootan University.
SHOBAI Sei Lecturer, Department of Chemistry, Shootan University.
中谷 宗弘 鹿児島大学, 理学部, 教授 (30041221)
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研究概要 |
海洋生物由来の生理活性テルペノイド化合物の研究試料として,鹿児島以南,沖縄,台湾にかけての亜熱帯海域に広く分布している軟体サンゴを選び,魚毒活性,抗菌活性などの生理活性を有するテルペノイド化合物の成分検索を行なった。検索試料としては,沖縄県石垣島近海のサンゴ碓で3種類,鹿児島県坊津海岸で2種類を採集した。採集後,冷凍下に研究室に運び,新鮮な生体試料を細かくチップ状に細片し,脂質成分であるテルペノイド化合物を抽出するため,最初メタノ-ルに浸漬した。メタノ-ル抽出液は減圧下に濃縮し,次に塩化メチレンー水に分配して塩化メチレン可溶部と水溶性成分に分けた。テルペノイド成分を含む塩化メチレン可溶部について生理活性をテストした所,沖縄産の抽出物は強い魚毒活性を示し,鹿児島産のそれは抗菌活性を示した。 次に薄層クロマトグラフィ-をモニタ-しながら,上記抽出物について順次,液滴向流分配クロマトグラフィ-,シリカゲルクロマトグラフィ-,分取薄層クロマトグラフィ-等の分離操作により化合物の単離を行ない,最新的には高速液体グラフィ-を行なうことにより精製した。その結果,沖縄産軟体サンゴからは7種のセンブレン型ジテルペンと2種のステロ-ル化合物を得,鹿児島産の認体サンゴからは30種類におよぶゼニア型ジテルペノイドが得られた。以下それぞれについて概略する。 1.沖縄産軟体サンゴからのセンブレン型ジテルペン 沖縄産の軟体サンゴから得られた7種のジテルペンのうち,4種はそれぞれ,センブレンーA,センブレンーC,ザルコフィト-ルーAおよびツンベルゴ-ルと同定された。これらはいずれも既知化合物であったが,ザルコフィト-ルーAは強力な抗発癌プロモ-タ-活性をもつことが知られている(発癌プロモ-タ-teleocidinの作用を1/1000mgの微量で強力に抑制)。また,ツンベルゴ-ルはこれまで陸上植物であるマツ科の植物に見い出されているだけである。他の1種は各種分光学的機器分析からセンブレンーAの骨格を有し,その構造はセンブレンーAの4つのビニルメチル基のひとつがヒドロキシメチル基に置き代わった新ジテルペンアルコ-ルと推定した。しかし,クロマト精製につれて,およびスペクトル溶媒中(重重クロホルム)で徐々に分解するために,最終的な構造確認にはいたっていない。残る2種のセンブレン化合物は先に得られたものとは異なり,2重結合を2つしか含まず,1つのエポキシ結合と2つの水酸基を持っている。そのうち一方は,2つの水酸基のうち1つが過酸化物となっている新奇なものである。これらの化合物は微量なため現在の所,立体化学を含め構造決定には至っていない。しかしながら少なくとも後者は新化合物である。これら化合物は20ppm濃度で魚毒活性を示し,特に前者は強い活性を示した。他にステロ-ル化合物として,cordisterolとcampesterolが得られている。 2.鹿児島産軟体サンゴからのゼニア型ジテルペン 鹿児島県坊津で採集した軟体サンゴxenia floridaのメタノ-ル抽出物は大腸菌や枯草菌に強い抗菌活性を示した。その活性物質の単離を行ない,30種の新ジテルペノイドを得,構造を明らかにした。 ゼニア属から単離された化合物はゼニア型ジテルペンと呼ばれ,構造的にxeniaphyllane,xenicinおよびxeniolideの3種に分類される。単離したジテルペノイドの構造的な特徴を見ると,xeniolideが7種であり,そのA環が単離中にメタノ-ルリシスして開環したと思われるものが3種得られた。またA環がエ-テル結合しており,我々が初めて単離したのが4種あり,この化合物群の構造に対し第4番目の名称,xeniaetherを与えた。次に,軟体サンゴEfflatounaria sp.novから得られている新骨格を持つジテルペノイドに属するものが5種類得られた。なお,これらの化合物のうち17種は3環性化合物で,生合成的にCー19がエポキシ結合の根元を上から攻撃して生じたものと推定される。ゼニア型ジテルペンは単環性と2環性の化合物のみが今まで知られており,3環性化合物の単離は今回が初めてである。他にA環が開環し,ジオ-ル体のもの,およびその脂肪酸エステルも得ている。脂肪酸がエステル結合したジテルペンも軟体サンゴからは初めてである。
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