研究課題
特別推進研究
メタステーブル原子、低速電子、光子をプローブとする電子放射顕微鏡(EEM)を試作し、それを用いて種々の固体表面(金属、半導体、有機薄膜等の表面)を観察した。EEMは通常使われている透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)と比べて、(1)電子状態を直接反映した情報が得られる、(2)表面に敏感である、(3)表面を損傷させることが少ない、等の特徴を持つ。特に、今回開発したEEMを他のEEMと比べたときの特色は次のようになる。(1)表面観察を目的としているため、装置内が超高真空である。(2)結像系にエネルギー分析器を内蔵しているため、微小領域のスペクトル測定とエネルギー選別像による観察が可能である。(3)3種類のプローブの採用によって、メタステーブル電子放射顕微鏡(MEEM)、低速電子放射顕微鏡(LEEM)、光電子放射顕微鏡(PEEM)としての機能を持つ。MEEMでは表面最外層の、LEEMとPEEMでは表面最外層から数層までの情報が得られる。また、電子プローブを用いて反射電子顕微鏡(MEM)としての測定をすれば、表面最外層のポテンシャルを反映した像が得られる。特に本研究の最大の眼目はMEEMの開発であって、メタステーブル原子による二次元像と局所領域のスペクトルが今回初めて得られ、表面最外層のミクロ領域の電子状態と分子配向が鋭敏に検出された。なお、メタステーブル原子は拡散過程で導入するため速度が小さく表面を損傷しないので、MEEMは、通常の表面のほか、他の顕微鏡では観測困難な表面(吸着表面、有機薄膜、生体試料等)を研究するのにも適していると考えられる。
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