研究課題
昭和63年度及び平成元年度にわたり、北奥羽3県(青森県、秋田県、岩手県)において、国指定天然記念物であるクマゲラの生態、特に、その分布、生息環境、餌及び生息個体数の推定について調査研究を行なった結果、おおよそ次ぎのような成果を得ることが出来た。(1)クマゲラの分布:上述3県においてクマゲラの目撃、巣穴、ねぐら穴及び食痕等から、クマゲラの生息分布を求めた。その結果、白神山地、十和田湖・八甲田、八幡平、真昼岳、毒ケ森及び栗駒山に生息することが確認された。さらに北上山地及び五葉山にも生息の根拠が認められたものの、生息域が狭いことから、これらの地域はクマゲラの生息地としての保護保全は困難と思われる。また、幸いにも平成元年度6月本調査研究で、本州で2ケ所目のクマゲラの繁殖が白神山地(青森県)で確認され、その詳細な生態の記録を得ることが出来た。(2)これまで採集したクマゲラの糞の分析の結果から、クマゲラのおおよその食性を明かにすることが出来た。(3)クマゲラの生息環境である天然ブナ林の総面積(本調査地域)を求め、さらに、生息可能面積を求めたところ約20万ha以下であった。(4)以上の調査結果から、クマゲラの生息個体数の推定を試みた。第1には各生息ブロック毎に、これまでの経験に基づいた最大数と最小数を求めた。第2には、生息可能面積とクマゲラの行動範囲(500-100ha)から、単純計算し、その生息可能数の推定を試みた。すなわち、北奥羽3県にはおおよそ、100-200羽のクマゲラが生息していると考えられ、また生息可能数としては最大250羽であろうと推定した。