研究概要 |
1.魚類の死後硬直の進行がATPの減少と乳酸の蓄積によく相関し,その速度0゚Cで促進された。0゚Cでは筋小胞体のCa^<24>取り込み能が低下するため筋小胞体からのCa^<2+>の漏出が起こり,細胞内Ca^<2+>濃度が増大し,筋原線維Mg^<2+>-ATPase活性が賦活される。その結果,ATPの消費速度が増大して硬直の進行が促進された。2.魚類の順応水温の死後硬直への影響はきわめて大きく順応水温と貯蔵温度の差が大きい程、硬直が促進された。3.運動飼育の死後硬直への影響については,運動飼育したトラフグや天然マダイではATPの低下速度が遅く,死後硬直が遅延した。運動飼育によって筋タイプに変化が生じ,天然魚のそれに類似した。4,コイを即殺し,0^°,18^°,49℃であらいを調製して物性を比較すると,0℃と18℃のあらいは類似していたが,49℃は異なっていた。走査型電子顕微鏡により,あらいでは筋線維に間隔ができること,表面の脂肪球が少なくなることが観察された,スズキを即殺し,同様にあらいを調製すると,49゚CのあらいではATPが著しく減少し,IMPが急増し,縮みはきわめて強かった。あらい処理によってFDPが生成,蓄積すること,49゚CではさらにFDPが分解し,乳酸が多量生成されることがわかった。すなわち,49゚Cあらいでは解糖によって補給されたATPが硬直エネルギ-として使われ,強い硬直が生じた。5.マダイ,コイを用い,即殺後急速凍結し,流水解凍すると,マダイではー1.6℃,コイではー1.1℃で解凍硬直が最も強く起きた。この温度差は海水魚と淡水魚の凍結点の差異によると考えられた。6.魚肉の解硬,軟化の原困として筋原線維の小片化が挙げられるが,小片化はαーアクチニンがプロテア-ゼによってZ線から遊離,可溶化され,Z線の構造が脆弱化されて起こることがわかった。また,弾性タンパク質コネクチンおよびネブリンの貯蔵初期における分解は筋原線維構造の弱化の要困と考えられた。
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