研究分担者 |
田中 義昭 島根大学, 法文学部, 教授 (70144681)
三瓶 良和 島根大学, 理学部, 助手 (00226086)
鈴木 徳行 島根大学, 理学部, 助教授 (00144692)
高安 克己 (高安 克巳) 島根大学, 汽水域研究センター, 教授 (00127490)
大西 郁夫 島根大学, 理学部, 教授 (40032445)
国井 秀伸 島根大学, 理学部, 講師 (70161651)
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配分額 *注記 |
23,100千円 (直接経費: 23,100千円)
1992年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1991年度: 6,300千円 (直接経費: 6,300千円)
1990年度: 5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1989年度: 9,100千円 (直接経費: 9,100千円)
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研究概要 |
本研究の主なねらいは中海・宍道湖の底質についての調査から風土記(奈良)時代以降の環境変遷を同らかにすること,またその時代の復元を行うことによって近い未来の望ましい環境がどのようなものかを両者を比較検討することによって具体的な提言が行えるまでに研究を進めることにあった.我々の提言が実施に移されるところまでは至っていないが,本庄工区の海水導入による土地(海域)の有効利用の提言や中海の覆砂の実施などで,研究を実際に役立てる段階に到達しつつあり,全体にして本研究は成功であったということができる. 平成元・2年度は風土記時代の復元のための米子湾での柱状採泥を行い,その試料の生物遺骸の分析から環境復元を行い,風土記の記述が上記による古地理復元とも合致することを確認した.考古学的調査では清水寺および中海の江島において発掘調査を行い,いずれも風土記時代の遺跡についての詳しい知見を得た.すなわち風土記時代の陸および入海の両方から環境復元を行ったわけである. 平成3・4年度は,これらの成果にたって具体的な提言に向けての研究が中心となった.その1つは本庄工区の調査で,これまで干拓が前提となっていたことから全くなされていなかった湖底と堆積物について各種音波探査を実施し,またこの地域にかかわる地質・地形等の資料を収集し,アトラスとして出版した.これは現在県を中心として検討されている土地利用のための基礎資料となっている.その2は中海における覆砂事業への参加であり,本研究で得られた湖底調査資料をもとにとくに堆積学的側面からの貢献がなされている.その3は中海飯梨川河口に出現したマッドランプの調査で,ミシシッピ河につぐ世界で2例目の発見となった.マッドランプについての研究は後半の本研究の中心課題となり,軟弱地盤の変形という大問題にかかわって大きな成果が得られた.その変形は円弧すべりによるもので,ミシシッピでいうダイアピルモデルに疑問を投げかけることになった.その4は大学前の低湿地遺跡群の調査であり,汽水域周辺の遺跡と遺物を包含する河川堆積層の研究が,微妙な海面変動を正確に捉えることでは大変有効であることが明らかにされ,IGBPのPAGESに貢献できる見通しが得られた.4年間にわたる研究で,未来環境づくりにあたっては完新世の地史.とりわけ風土記時代の自然環境学的復元をもとにした過去から現在の歴史を基礎に実践に移る段階に到達した.また次の段階では沿岸汽水域の形成史から環日本海文化の形成過程の研究へと進める展望が切り開かれた.
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