研究概要 |
本研究の目的は高エネルギ-天体ガンマ-線がつくる空気チェレンコフ光を大口径パラボラ鏡で集光し,焦点面にできる像を高速,高感度の細密な光電子増倍管で記録してハドロンシャワ-によるバックグランドを99.5%以上排除し,かつ角度分解能を0.15°以下で観測する望遠鏡の技術を確立し,それを実証することにある。 平成3年度は,南オ-ストラリア,ウ-メラに直径3.8mのパラボラ鏡の設置が完了し,その天体追尾性能の試験から実験を開始した。ウ-メラで観測する理由は,人工光が少く,晴天率が高い場所であることに加えて,アデレ-ド大学が別のチェレンコフ望遠鏡を設置しており,2台の望遠鏡で連動観測して精度と信頼性を上げるためである。 8月初めの新月の時期に最初の設計の1/4に相当する光電子増倍管64本から成るイメ-ジカメラが完成し,夜光の量及び宇宙線によるチェレンコフ光の像を記録する試験を行った。夜光強度は,可視領域で22.5等級相等の暗さで,十分観測適地であることを確認した。また少い観測時間ではあったが,5〜10TeV相当のチェレンコフ像を初めて捕えることに成功した。 秋からは本格的なエレクトロニクスの搬入設置が終了し。平成4年2月及び3月の新月を待って,比天のカニ星雲と似た天体であるVelaパルサ-及び活発な銀河であるCenA天体からのガンマ-線探索を目標に観測を行い(200本の光電子増倍管からなるカメラ)100万例のデ-タ-の記録を行った。予備的な解析結果が出つつある段階であるが,チェレンコフ像を確実に捕えていることは確認できた。検出最小エネルギ-はトリガ-頻度及び記録した信号強度から,現在のところ1〜2TeVと考えられる。 今後,検出エネルギ-,方向決定精度,バックグラウンド等をモンテカルロ計算とも対比して詳しく解析していくと同時に,引き続き観測デ-タの集積を行っていく。
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