研究概要 |
地質体を構成する岩石・鉱物の微細構造・組織形成過程には,"水"が重要な役割を果たしている。地殻上部を構成する重要な岩石中の鉱物である石英の微細構造・組織形成過程に着目し,その過程での"水"の存在形態,存在量と分布を顕微FTIRによって検討し,"水"の役割を明らかにすることを目的に進めてきた。 1,鉱物中の"水"の化学種や在存量の検討。(1)石英のような光学異方体の"水"について測定方法の開発を行なった(投稿中)。(2)結晶構造中である特定の位置を占めるOH^-双極子の方位決定法の開発(準備中)とOH^-の量の評価法の開発(現在検討中)を行なっている。 2,地質条件の違う2地域の石英の再結晶過程での"水"の存在形態と存在量の変化から,2地域で"水"の働きが大きく異なっていることを見いだした。(1)変形後低封圧下での熱変成を受け再結晶した石英では,"水"は転位の移動に大きく関与し,再結晶核形成に大きな役割を果たすが,その後の粒成長にはほとんど関与しない。また,この過程で"水"は石英構造中に取り込まれる事が明らかになった(準備中)。(2)微細粒石英の封圧下での再結晶では,"水"は粒間の流体として溶解沈澱に大きく作用し,結晶粒成長に大きな役割を持つ。 3,セン断体の石英の変形と"水"について検討した。変形度の大きな岩石中の石英で"水"の存在量が多くなる。この結果は変形機構との関連で興味あることであり,現在検討中である。 4,引き続き検討する事項。(1)広域変成岩中の石英の組織変化と"水"(水以外の流体についても検討)の役割を明かにしたい。(2)石英以外の鉱物(かんらん石,十字石,トパーズなど)中の"水"("水"以外の流体についても検討)の組織・構造形成機構との関連などの検討を引き続き行なう。
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