研究概要 |
1064nm励起フ-リエ変換ラマン分光光度計を組みたてて,導電性高分子と光合成色素の研究の研究を行なった。 (1)1064nm励起フ-リエ変換ラマン分光光度計の組み立て 励起レ-ザ-には,連続発振Nd:YAGレ-ザ-(CVI社Cー92)の1064nm光を用いた。分光計は日本電子(株)のJIRー5500を近赤外用に改造して使用した。散乱光の集光は軸外しの放物面鏡を用い後方散乱配置で行なった。散乱光は,誘電体蒸着の長波長透過フィルタ-でレイリ-光をラマン光程度まで弱められたのち,分光器に入射される。入射光は干渉計で振幅変調をうけたのち検知器で検出され,さらに,分光光度計により通常のデ-タ処理をうけてスペクトルに変換される。 (2)測定結果 2・1導電性高分子 Naをド-プしたポリパラフェニレンビニレンではド-パント量が多い場合も少ない場合も観測されたスペクトルはバイポ-ラロンに帰属された。ド-プ量が少ない場合にはポ-ラロンのみが生成するという定説は,この系には当てはまらないことがわかった。Naをド-プしたポリアセチレンでは,ド-パント量の増加に伴い電導度の急激な増加とパウリ常磁性の出現が報告されているが,それらに対応する二段階のスペクトル変化が観測された。ヨウ素を多量にド-プしたポリアセチレンでは電導度の違いによりラマンスペクトルに違いが観測されスペクトルと電導度に相関がある可能性がある。 2・2光合成色素 Rhodobacter sphaeroides blueーgreen mutantの膜標品のスペクトルを測定した。膜標品には脂質やタンパク質,色素などが含まれているが,観測されたバンドはすべてバクテリオクロロフィルaに帰属された。モデル化合物の測定結果から,中心金属であるMgは5配位であり,すべてのCOは水素結合をしていることがわかった。
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