研究概要 |
Adrenoleukodystrophy(ALD)遺伝子同定を目的として,第一にX染色体の物理地図を作製することを目的として,ヒト染色体としてX染色体の一部(Xq24ー28)のみを含む雑種細胞(X3000ー11)を用いて,コスミドゲノムライブラリ-を作製した.このライブラリ-からヒトXq24ー28由来のコスミドクロ-ンを1778個分離し,それらをすべてDNAとして調製,Xq24ー28の領域の物理地図に大変有用な400個のNotI リンキングクロ-ンを多数同定した.さらに遺伝子としての機能単位を同定するのに大変有用なCpG islandの同定する手法を確立し,NotI,SacIIの制限酵素を用いて350個のCpG islandを同定した.第二に,ヒトXq24ー28のみを含むX3000ー11においてメッセンジャ-RNAとして転写されているヒト遺伝子を特異的に単離する方法を確立し,ALD遺伝子としての候補となる遺伝子を534個同定することができた.第三に,ALD患者細胞リンパ球をEBウイルスでtransformし,ALD細胞バンクを樹立した.このうち13例のALD症例について,色覚蛋白遺伝子のうちgreen pigmentのすべてが欠失しているALD1例を発見することができた.これは従来報告のない欠失例で,ALD遺伝子と色覚蛋白遺伝子が同時に欠失している可能性を示唆し,ALD遺伝子を効率よく同定できる可能性があり貴重な症例と考えられる. さらに,ALDにおいて極長鎖脂肪酸が増加する原因として,われわれは従来の研究で極長鎖脂肪酸のβ酸化の低下に加えて合成系も亢進があることを明らかにしてきたが,特にこの極長鎖脂肪酸の合成系を抑制することのできる薬剤が見つかればALDの治療法として大変有用であるので,極長鎖脂肪酸合成系を定量できる培養実験系を確立した上でその抑制剤についての検討を行い,単価不飽和脂肪酸が有効であり,中でも鎖長22あるいは20の単価不飽和脂肪酸が大変有用であることを証明した.
|