研究概要 |
実験的険討:(1)システアシン投与により,ヒトナニ指腸潰瘍と類似したアドレナリン刺激下における酸分泌増加現象が出現した。この現象にはガストリン分泌の増加,ソマトスマチン分泌の低下の関与が示唆された。(2)ファモチジンの慢性投与は、幽門部ガストリン細胞数を増加するが,プロスタグランディンの併用投与は,ソマトスタチン細胞の増加を起こし,血清ガストリン値を抑制する傾向にあった。(3)幽門狭容ラットでは,幽門部ガストリン細胞,ソマトスタチン細胞が増加するが,ファモチジン併用投与により,ソマトスタチン細胞の増加は抑制され,血清ガストリン値,ガストリン細胞数はさらに増加した。 臨床的検討:(1)アドレナリン(40ng/kg/min)1時間点滴静注により,康常者では酸分泌は抑制されるが,十二指腸潰瘍,胃潰瘍では,酸分泌の増加を示した。アドレナリン作働性ガストリン分泌は,幽門洞ガストリン分泌を反映していた。(2)十二指腸潰瘍症例を,臨床的病態より分類すると,穿孔例は基礎身分泌量,インシュリン刺激最高酸分泌量が高値を示していた。狭容例は,基礎ガストリン分泌量の増加とともに,アドレナリン刺激ガストリン分泌量の増加が認められた。(3)胃液検査(アドレナリン負荷試験),24時間胃内PHモニタリングにおける検討では,βー受容体拮抗剤の投与は,ガストリン分泌を抑制するが,酸分泌の低市の生じない症例も存在し,酸酸分泌に対するβー作用は,ガストリン分泌を介する促進的な機構とともに抑制の関与が示唆された。 以上により,潰瘍発生における酸分泌異常として,アドレナリン刺激酸分泌があげられ,βー作用によるもので,ガストリンが重要となるが,ソマトスタチンのような抑制系も関係してくる。ガストリン細胞動態,ソマトスタチン細胞動態には,酸,プロスタグランディンが関係し,潰瘍療におけるプロスタグランディンの有用性が示唆された。
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