研究概要 |
歯科材料の副作用は体液中での成分の微量溶出が主因と考えられている。従って、歯科材料の体液中における溶出動態や、溶出物の毒性情報を明らかにしておくことが歯科材料の安全性を考える上で重要である。本研究はこのような見地に立って、4種のTi合金Ti6A14V,Ti5A12.5,Fe,Ti5A13Mo4Zr,TiーNiをin vitroで唾液中に14週間浸漬し、成分元素の溶出量を原子吸光およびICPで経時的に測定するとともに、溶出物の毒性を微量で毒性を発現する感作性、変異原性について研究し、得られた濃度ー作用関係から歯科材料の障害誘起性の可能性について検討した。1.Ti合金の溶出:ヒト唾液中での合金からTiおよびAlの溶出は、試料を粉末化して行った。Ti6A14V,Ti5A12.5Fe合金粉末からの、浸漬14週間のTiの累積全溶出量はそれぞれ1045、1016ng/100mg合金、浸漬6週間のAlの累積全溶出量は165.0、480.0ng/100ng合金であり、いずれの合金からも長期間継続した溶出を認めた。しかし、その量は微量であり、毒性学的には遺伝毒性には遺伝毒性、感作性が問題となると考えられる。2.NiおよびCdの抗原性:ICRおよびBALB/c系マウスを用い、NiCl_2飲水中添加または金属Ni皮下埋植し、血中金属量の定量と免疫学的検討をCdCl_2飲料水中添加または金属Cd皮下埋植と比較した。1)Ni経口投与または皮下埋植したICRおよびBALB/c系マウスにおいて、抗核抗体の誘導を認めなかった。Cd経口投与ICR系マウスにおいて抗核抗形成を17%認めた。2)NiCl_2経口投与BALB/cマウスにおいてリンパ球のLPS、ConーA、PHAによる幼若化が増加し、金属Ni皮下埋植群ではConーAによる幼若化のみが増加した。3)NiまたはCdを投与したマウスの脾臟リンパ球のT細胞、B細胞の出現率は対照群との間に有意差を認めなかった。4)金属Cd皮下埋植ICRマウスでは対照群に比して脾リンパ球T細胞のサプレッサ-T、ヘルパ-T細胞出現率の有意の低下が認められた。
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