研究概要 |
先に,内須川はU仮説に依拠する予後に関する16類型を発表したが,予後研究を行うに当って,U仮説の内面因子(Rg×D,Rg×R)を前景因子と背景因子との絡みで一つにまとめ,外面因子を統合促進とその不全条件によって一つにまとめると,大きく4群に区分できる。1群:背景因子が強力で前景因子を規定して悪化を形成している症例。2群:前景因子と圧力因子が相互に作用して悪化を形成している症例。3群:圧力因子が強力で前景因子の特徴を示している症例。4群:圧力因子が強力でありながら,前景因子が良好で緩和されている症例である。 方法:対象児総数は50症例で,いずれも自験例。治療終結直後より最長8年5月の予後。毎年7〜8月期に各家庭に調査用紙を送付し回収。また1990年7〜8月に都内某治療機関と筑波大学において面接調査と諸テストを実施した。以下の通りである。HUーI型親子言語関係診断テスト親子吃音関係簡易診断テスト,PVT,田研式親子関係診断テスト,SMT神経質傾向テスト,社会成熟テスト,耐性尺度,向性尺度,DTR録画。 結果と考察:安定性,適応性,耐性,対人的過敏度を前景固子として,向性,体質,遺伝,成熟度,活動性を背景因子として5点評価を実施。内面因子段階(5段階)と改善度(5段階)を同一図表にプロットして考察すると,吃音の改善と内面因子の段階には正の相関が確認された。1群に4症例,2群に4症例,3群に1症例,4群に3症例が該当した。その他の症例は亜素として位置づけられた。 結論:吃音の臨床診断仮説U(U仮説)で示唆されていた通り,吃音の改善には,基低にある内面因子の改善が強く関与していることが確認された。前景因子と背景因子の相関から4群が抽出された。特に1,2群には遺伝容因の関与が認められた。また4群以外には,環境面の圧力が強大で,環境調整の重要性が,幼児・学童を問わず確認された。
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