研究概要 |
研究目的:継続される情報処理活動に関わる実働記憶の形成過程について調べる。そのために,リストの提示一再生という記憶課題を多数回繰り返す過程における被験者の反応を分析した。 研究計画:実験は以下の手順で行った。記銘リストとしては,1)カタカナ,2)数字,3)アルファベットの3種類のカテゴリから選んだ各3文字をそれぞれ1項目とし,計9項目からなるものを用いた。リストは毎試行変化した。再生テストでは,試行ごとに3つの異なる系列位置を指定し,それぞれに対応する項目を再生させた。検索条件として,1つのカテゴリ名を手がかりとして与える条件と,そのような手がかりのない条件の2種類を用いた。また,実験1では,9個の標的項目を画面上の同一位置に継時的に提示し,その後再生テストを行わせるという試行を27回行った。実験IIでは,基本的に同様の手続きであるが,9個の標的項目をそれぞれ画面上の異なった位置に継時的に堤示するという条件であった。 研究成果:1)2つの検索条件において,それぞれ異なる系列位置曲線が見られた。カテゴリ名を手がかりとした条件では,試行の反復にともない,3つの各カテゴリに属する項目のいずれにおいても新近性効果が見られた。一方,手がかりなしの条件では,そのような傾向は流動的であった。すなわち,検索の際のカテゴリ情報は新近性効果に安定した影響を与えた。 2)標的項目をすべて同一の空間位置に継時的に提示する場合と,それらの項目をそれぞれ異なった位置に継時的に提示する場合とを比較した結果,標的項目に関するカテゴリ情報と空間情報とがともに与えられている場合に,再生成績が良いことが示された。 3)この研究の過程で,情報処理のための受容方式としての実働記憶の形成に関する探索的モデルが検討された。
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