研究概要 |
本研究の目的は,マルチメディア教育環境における,主として映像が学習者に及ぼす様々な効果の実験的検討であった.この検討を進めて行く際の具体的な目標として,以下の3点が掲げられた.(1)映像情報と音声情報の平行処理方略についての検討;(2)実際的な教育場面のモデルとしての,LL教室内レスポンス・アナライザ-・システムを利用した研究システムの確立;(3)実験室的研究手法としての,アイカメラを用いた映像視聴時の眼球運動および瞳孔反応測定・分析システムの構築. まず(2)のレスポンス・アナライザ-・システムに関しては,本研究の早い時期から各種映像教材を用いて,同時に多人数の学習者を対象として,教材の理解度や興味の度合い等についてのリアルタイム・デ-タの収集を実施した. つぎに,(3)のアイカメラ・システムでは,特にその瞳孔反応測定部分のハ-ド/ソフトウェアの開発に力を注ぎ,いくつかの基礎実験を通じて画像と視覚系反応の関係が分析された. なお(1)については,(2),(3)の検討やその他の関連する研究知見を総合した理論的考察が主体となる.しかし研究年度内では,認知心理学的な方法論の模索を行なう中で,動画像の情報処理モデルのごく基本的な要素を抽出するにとどまった.なお本研究の枠組みで,個.別学習対応型のマルチメディア教育システムを試作ずみであり、そこでは実験的な制御のもとで画像情報と音声情報を活用した学習が展開される.今後はこのシステムによる学習場面に,動画像に関する基本モデルおよびアイカメラ・システムを適用して,音声情報処理を含んだより包括的な映像の学習者モデルを構築して行きたい.
|