研究分担者 |
馬場 宏 大阪大学, 理学部, 教授 (60156536)
板橋 隆久 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (20112071)
藤田 佳孝 大阪大学, 教養部, 助手 (60093457)
宮武 宇也 大阪大学, 教養部, 助手 (50190799)
下田 正 大阪大学, 教養部, 助教授 (70135656)
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研究概要 |
超流動ヘリウム中に導入された不純物イオンの性質と振舞いを研究した.不純物イオンのまわりには,誘電分極によって50ー100個のヘリウム原子が凝縮し,マイクロクラスタ-が生成される.これを氷球粒子と呼んでいる。その内部の圧力はOKにおける融解圧を超えていると計算されている.したがって,イオンは固体中に閉じ込められていると考えられよう.しかし,氷球粒子が固相であることを直接示す実験事実はないので,この点に注目した. 1)重イオン反応によって放射性偏極核ビ-ムを生成して,超流動ヘリウム中へ打ち込む.それからの不安定核からのベ-タ線放出の非対称を測定し,その時間変化の測定を可能とした.2)測定したベ-タ線放出の非対称から核偏極の保持(凍結)を調べた.このさい,ベ-タ線の非対称放出の測定の時間に関する微分化をはかり,その時間的変化の追跡を行ことができた.3)重イオン反応Th(^<14>N,^<12>B),D(^7Li,^8Li)等によって不安定核^<12>B(20ミリ秒)や^8Li(800ミリ秒)を生成し,これらを超流動ヘリウム中に打ち込み,ベ-タ線検出法とアルファ-線検出法によって氷球粒子の寿命を決定した.寿命は1秒のオ-ダ-であった. 要約すると,本研究では不純物イオンとして,重イオン核反応で生じる偏極した短寿命ベ-タ放射性核のイオンを用い,1)不安定核の放出するベ-タ線の検出による氷球粒子の検出をより高感度,高効率にし,またアルファ線の検出による氷球粒子の新しい検出法を確立した.2)核磁気共鳴のもとでベ-タ線の非対称放出を測定して,核スピン偏極が保持(凍結)されたことを高い精度で確め,核磁気共鳴線の幅から氷球粒子が固体構造を持つかどうかを明らかにする手がかりを得た.3)未知の核モ-メントをもつ短寿命核を生成して氷球粒子として輸送し,ベ-タ線の非対称放出を核磁気共鳴の下で観測して,核モ-メントの新しい一般的な決定法を確立する基礎が築かれた.
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