研究概要 |
本研究では興奮性をもつ反応拡散方程式(BVP方程式)におけるパタ-ン形成とその運動について研究してきた。この方程式は「反応拡散」という言葉から想像される以上の広い現象と関連をもち,非平衡系におけるパタ-ン形成のプロトタイプ方程式というべきものである。 まず,空間一次元系で,BVP方程式は,興奮領域と非興奮領域が空間的に交互にならぶ周期解が存在することを示した。さらに,パラメ-タを変えていくとこれら興奮領域は脈動を起こす。興味深いことは,そのとき全領域が位相をそろえて振動する場合ととなり合う領域が反位相ずれた振動を起こす場合との二種類が安定に存在できることである。 第二に,動かない局在ドメインと伝播するパルスとの間の移りかわりを詳細に調べた。パラメ-タ空間において二つの解が共存できる領域があることを確認することができた。さらに,最近,この第二の研究から新しい進展があった。上の共存領域は予想していたほど単純ではなく,伝播する,任意の大きさの,パルス列が出現し,これは二変数の系で,ペ-スメ-カなしに同心円パタ-ンを発生させることが可能であることを意味している。 以上が本研究で得た新しい知見であるが,この研究を通して,非平衡開放系における動的多安定性の重要性を認識した。上に述べた,位相のそろった振動と反位相ずれた振動,また,動かない局在ドメイン,伝播するパルス列などはいずれも互いに共存できる。このようにダイナミカルな状態が同時に存在できるところに開放系の特徴がある。生体系で動的多安定性がどのような役割を果しているのか,また,外部刺激で一方の状態から他方へどのように移行するのかなどは、今後に残された課題である。
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