研究概要 |
超流動乱流への遷移過程に関して次のような多方面からの実験的なアプロ-チが行われた。 1.可視化法,レ-ザ-流速計を応用した熱カウンタ-流ジェットの測定.特に,加熱誘起性の第2音波ヘルムホルツ振動に着目し,その発生条件と超流動乱流遷移による振動変調について調べた.併せて,線形安定解析も行い,実測と良い一致を見た.このことは,乱流遷移により発生する散逸効果を記述するゲルタ-・メリンク項が,比較的遅くしかも弱い変化(1〜10Hz)に対しては,妥当な近似となることを示すものと思われる. 2.2流体方程式に対する数値実験(直接数値解法)の応用(熱衝撃波の解析).量子化渦の効果として発生する散逸に対して,非定常効果を含むように改良したゲルタ-・メリンク項と,渦密度発展方程式の導入とが比較され、量子化渦の効果について定性的な知見が得られた.また,このような高速現象に対する後者の優越性が示されたが,同時に渦散逸に関するこれら経験則の定量的限界も明かとなり,今後の研究の方向性が示された. 3.ファウンテンポンプの超流動乱流(非線形)域における流動特性の測定.この領域での多孔質流れにおける散逸則の記述に,その内部構造を反映することの必要性を明かにし,そのモデル化に成功した.これにより,乱流遷移が抵抗あるいは流量に対してよりも温度上昇に対して桁違いに大きな効果をもつこと,また流量に最大値の存在することなどが見出された.また,その予測も可能となった. 4.レザ-ホログラム干渉計法の超流動現象への応用.クライオスタットを含むシステムの構築を終え,予備実験に成功しており,間もなく熱衡撃波に対する本実験が開始されんとしている.この実験に用いるべきAuーSn薄膜超電導温度ディテクタ-も試作に成功している.
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