研究概要 |
本研究は電子計算機による数値解析を援用した流れの診断法の開発を目的としている.ここで言う流れの診断とは,管路や流体機械等の流れ場内に存在する異物(固形物やキャビテ-ション)を外部から検出し,それらの位置や形状を同定することを意味する.上述の流れ診断法を一般的な流路に適用するための基礎研究として,まず単純形状の閉鎖空間を対象として研究を行った.水封のアクリル製と真ちゅう製の二種類の直方体容器内で,高圧放電による生成気泡により衝撃的圧力波を発生させた.その際,気泡の安定な発生,放電回路と受信回路の正確な同期,超高周波信号の受信,AD変換機を通して計算機へデ-タを高速にアクセスするプログラムを作成した.その結果,極めて測定精度の高いデ-タ計測が可能となった.計測デ-タを用いた計算結果より,同定すべき水中異物の形状が単純である場合(例えば球形),三次元の境界要素法逆問題を解く必要はなく,一次元理論を用いた方法により実用上十分な精度の解が得られることが明かになった.すなわち,実際の圧力波波面は非定常で複雑な三次元の形状を有するが,波動の異物内透過,異物内屈折,及び異物回りの回折のみに着目し,音響幾何学近似法を適用すれば,三次元計算は不要となる.ただし,流路の境界壁面については一次元解法では不十分であり,壁面の音響インピ-ダンスの特性を正確に考慮しなければならないことが明かになった.一方,同定すべき水中異物の形状が複雑である場合には,波動方程式に対する三次元の逆問題を解く必要がある.本研究では逆問題の解法として境界要素法の順解析を反復する方法が有望であると考え,三次元境界要素法を流路内の波動解析に適用する場合の高精度計算法を提案した.そして,この方法を用いて流路内の三次元異物を実時間で同定する方法を開発中であり,その成果については発表を予定している.
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