研究概要 |
全合成純粋石英ガラスにおける脈理、すなわち屈折率差を生じる原因は密度の揺らぎであると考えられ、これは原子レベルでみれば異常な結合状態(例えば〓SiーSi〓、〓SiーCなど)を生じている可能性が高いと考えた。 平成元年度は、脈理と異常結合や不純物との関連を明らかにすべく研究を行った。その結果、まず光ファイバ母材には製造法に依存して酸素の過不足が径方向にに空間分布を有することが明らかとなった。例えば、ス-ト法で作製された試料では、中心部よりも外周部において5.0eVと7.6eVの光吸収が強く、2.7eVと4.4eVの光ルミネッセンスも大きく現れること、プラズマ法で製造された試料では、逆の傾向が見られることなどを明らかにした。また、酸素の過不足のみならず、不純物のOH基や塩素も径方向分布を有することを明らかにした。(R.Tohmon et al.Journal of Applied Physics,67,1302(1990))。 2年度においては、これらの異常結合を電離放射線やレ-ザ照射等により励起することにより、3重項欠陥の生成、および非架橋酸素ラジカル(NBOHC)の種々の形態を観測した。3重項欠陥を電子スピン共鳴により観測し、その生成が酸素空孔に関連していることを明らかにした(R.Tohmon et al.,Physical Review B,41,7258(1990))。また、光吸収と発光測定により、NBOHCは水素結合の有無により、2つの形態が存在することを明らかにした(Munekuni et al.,Journal of Applied Physics,68,1212(1990))。 放射線照射あるいはレ-ザ照射による異常結合からの欠陥生成メカニズムとして、バンド間遷移によって生じた電子・正孔対あるいは励起子による前駆体(異常結合)へのエネルギ-移動によることを明らかにしたH.Nishikawa et al.,Physical Physical Review B,41,7828(1990))。
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