研究概要 |
近年、筆者らは「光波と変調波の速度を完全に一致させることにより、従来困難とされてきた超高速・広帯域光変調器が実現可能であること」を見出し、理論的・実験的検討を進めてきている。今回、科研費補助金を得て研究を進めた結果、新たに立体構造に基づく光変調器を提案することができた。その理論的特性は、波長1.3umおいて変調帯域幅209GHz,半波長電圧4.8V,性能指数1.1mW/GHzと優れたものである。本研究では、技術の積み上げが進行しつつあるニオブ酸リチウムを用いた素子を取り上げ、「解析・設計」を中心に、原理確認のための基礎的実験を行った。 提案素子の概要 素子はリッジ型光導波路(断面凸状)とその上部に形成された低屈折率部(解析では空気層を仮定)、およびリッジを挟むように配置された縦型進行波電極から構成されている。本素子では変調波が低屈折率部に電界をリ-クしながら光導波路部分を伝搬するので速度が上昇し、光波と変調波が等速度(速度整合)で伝搬するので帯域幅は理論上無限大となる。実際には、分散と電極損失により制限を受ける。電極損失としては表皮効果の影響がもっとも大きい。これらを考慮して解析した結果、(リッジの高さd_L)/(リッジの幅W)=0.04、(電極の高さd)/(リッジの幅W)=2.5において完全速度整合し、同時に電源とのインピ-ダンス整合も達成される。Cu電極の計算例では、素子長5mmでは帯域幅1THzであるが、分散による帯域幅の上限は350GHz程度と見積もられ、特性限界として素子長1cmで209GHzである。 基礎的実験 ECRエッチング装置を用いて、光導波路や電極の部分試作を行った。定在波の測定結果より変調波の速度が計算どうり上昇すること、高能率であることが明らかとなり、16GHzまで光変調が確認できた。今後、試作検討を継続したい。
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