研究概要 |
浮遊土砂の堆積機構については実験的に解明を行った。樹木を円柱で模擬し,円柱群を2列,4列,10列と変化させて,流れ場の特性と土砂堆積の特性との関係を探った。樹木が2列の場合には,接合部付近の流速の横断方向の勾配は小さいが浮遊土砂は高水敷のかなり遠くまで運ばれる。この場合には高水敷上の流速も相対的に大きく,移流の効果が大きい。これに比べて高水敷全体に円柱を配列した場合には接合部付近にのみ浮遊砂が推積し,高水敷での浮遊砂の輸送には拡散が支配的であると考えられる。樹木が高水敷を半分程覆うような場合には,樹木域と高水敷側岸との間にも大規模渦が生じ,樹木域をはさんで反対向きに回転する1対の大規模渦が形成される。浮遊砂の推積は2〜3列目の樹木群付近で生じ,大規模渦による移流と拡散の両者の寄与が現われる。しかし,その割合を定量化するには至らなかった。堆積率は有効値で0.45mg/min・cm^2であった。 氾濫原の樹木が流れに与える抵抗を幹の抗力のみでなく,枝葉によるボイルの生成も考慮して定式化した。水深全体にわたるボイルに関する定量的な観測は行われていないので,流体力学的なボイルの特定な文献で得られている機構を再構成して理論的に導かれた。これを用いて幅が10kmの氾濫原の洪水流量を予測したところ,観測値と非常によい一致を得た。 横断方向の運動量交換については代数的応力モデルを用いて内部機構を考察した。最初に計算法の検定を行い,ダクトの流れに対する係数を1つ修正する必要があることが示された。流れの3次元的挙動の基となる横断方向の運動量輸送については,2次流による移流が乱れによる拡散型の輸送を大きく上廻ることが分かった。
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