研究概要 |
本研究では,水辺空間を地域活性化のシンボルとして魅力ある都市づくりを進めようとしている隅田川,また水遊び,水生生物の保護,豊かな景観を楽しむ親水護岸による水辺環境の創出,整備を図っている多摩川を対象として,地域の歴史,文化,河川固有の水質浄化機能を調査することにより,ウォ-タ-フロント開発,水環境保全の在り方をシステム的,物理的に評価することを目的として、研究を進めた。 1)都市化に伴い複雑化してきた水環境の整備(水質,水辺空間等),利水(飲料水,工業用水,農業用水),治水の調和を考えた場合の種々の要因を構造する事により,都市化による水利用の変化を表わす要因,都市化による社会基盤の変化を表わす要因の相互波及の構造を多摩川を例にしながら検討し,河川整備での問題点を明らかにした。 2)多摩川における高水敷開放の地域への効果,歴史的変遷を調査し,また現状の整備が利用者にとってどの様に受け取られているかをアンケ-ト調査する事により把握した。戦後の農地から緑地さらにレクレ-ション施設へと高水敷が開放されるに従い,利用者の範囲は目的においてもまたアクセスの所要時間においても大きく広がり,流域に残された唯一のオ-プンスペ-スとして利用されている。多摩川の役割の歴史的変遷,史跡から河川と住民とのつきあい方の歴史を調べ,今日の河川整備の在り方との比較検討を行い,多摩川の有している多摩川らしさを明らかにした。 3)大川として江戸の町のシンボルであった隅田川をなぜ今日のような姿に変遷したかを考察し,現在進められているス-パ-堤防,水辺空間整備への地域住民の意識と期待について調査した。河川沿岸の住民の立ち退きと,新しいビルでの整備は住民の開発への直接参加を疎外しており,整備の進行に伴って人口の変動が激しく,漸減の傾向を示している。隅田川水辺利用者への意識調査により,整備ではハ-ドのみではなく河川と流域の付き合いの歴史の教育などソフト面への要望を多いことが分かった。
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