研究概要 |
岩石の安定性を損なわせる自然現象は、多種多様かつ複雑であり,最終的には,自然環境因子の複合作用の解明が必要と考えられるが,各因子の個別的効果に関しても未解決の点が多く残されている。とくに,繰返し応力や熱サイクルに関しては,その重要性にも拘らず,実験資料が極めて乏しい現状である。そこで,本研究では,低温熱サイクルの影響に注目しつつ,岩石の耐久性とその評価方法に関して,一連の基礎的調査・研究を行なった。報告書はその成果を取りまとめたものであり,つぎの3部からなる。 第I部 弾性波伝播速度による安定制評価 第II部 凍結融解試験による耐久性の評価 第III部 亀裂構造分析への画像処理の応用 まず,第I部では,岩石の長期安定性に関する有望な非破壊試験法として,弾性波伝播速度測定を提案し,その適用例として,江戸末期に細粒岩を用いて造られた熊本県本渡市の祇園橋の安定性診断について詳述する。つぎに,第II部では,岩石の耐久性評価法として円柱試料を用いる凍結融解試験を分析・検討する。具体的には,天草砂岩の試験結果から低温熱サイクルによる風化過程の一般傾向を示すとともに,この試験結果を第I部の成果と対比し,凍結融解試験の有用性を明らかにする。つぎに,第III部では,先端画像処理法の応用に関する成果を報告する。すなわち,従来から広く実施されてきた顕微鏡観察による亀裂構造分析と健全度評価の迅速化,高精度化について論じる。
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