研究概要 |
1. 真性粘菌のリン脂質の空間分布および刺激による変化 真性粘菌は代表的な生体防御細胞である白血球と同じくアメ-バ型細胞である。白血球では細胞が小さすぎて、種々の細胞内物質の空間分布を測定することは出来ない。それ故、大きな細胞である真性粘菌を用いて実験した。真性粘菌細胞の先端ではphosphatidylethanolamine(PE)が全リン脂質の約46%をしめ、次いで、phosphatidylcholine(PC)が32%であった。他のリン脂質としてphosphatidylinotitol (PI, 8%), phosphatidylserine (PS, 6%),cardioミllipin (CL, 4%), phosphatidic acid (4%)であった。先立から内部にいくにつれて、PEの含量は減少し、PCのそれは増加し、先端から約2cm程度以降は、PEが約41%、PCが約38%であった。他の成分は変化がなかった。忌避物質であるCacl_2を与えて、リン脂質の空間的時間的変化を調べた。CaCl_2刺激の5、10分後では、先端でPEがPCを上回ることには変わりはなかったが、PE、PCの割合が等しくなる位置がだんだん先端に近くなり10分後には先端部から1cm以内で両者が逆転しているのがわかった。 2. 種々の細胞に紫外線を照射すると忌避行動をとる。この時、活性酸素の発生が見られる。紫外線照射による活性酸素の発生を検出する簡便で鋭敏な方法を開発した。血小板輸血に際して、共存するリンパ球を不活性化するために紫外線照射が経験的に有効とされていたが、本方法により、活性酸素が関与していることが明らかになった。 3. 高度好塩菌の近紫外光に対する忌避行動の光受容体はホボロドプシンである。好塩好アルカり菌からホボロドプシンを精製し、その光化学反応を調べた。
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