研究概要 |
“誘導電圧重畳"は,複数のパルスを強磁性体コアを用いて重畳することによって高電圧を得る新しい方式のパルス電力技術である。本研究は,高輝度電子ビ-ム発生を目的とした誘導電圧重畳装置“VIVAーI"(定格出力4MV)の開発を通じて誘導電圧重畳技術の確立を目的とする。“VIVAーI"は,マルクス発生器,ブル-ムライン方式パルス整形線路(PFL),誘導電圧重畳部から構成され,PFLで発生された2MV,60nsのパルスを4分割したうえで,2段の誘導重畳部でこれらを2並列・2直列に重畳する方式を採用している。本装置は,平均電位傾度応び1段当たりの印加電圧を高く(2.5MV/m,及び2MV/段,いづれも世界最高値)設定している点に特徴を持つ。 初期動作確認は,各重畳段に各2個(定格の2/3)のコアを挿入し,定格の40%の範囲で全システムの動作特性を評価した。その結果,1斜動負荷試験では2MV(1MV/段)の出力電圧が確認された。2模擬負荷試験と,負荷のインダクタンスに起因する電圧降下を評価し,出力部のインダクタンスが設計値(〜450nH)と一致することを確認した。3電子ビ-ム発生及び伝送実験を行い,加速電圧1MVにおいて18kAの電子電流と,ガイド磁場による良好な伝送特性が得られた。 次に,定格動作条件の実現のため,セル内の電界分布を評価し,これに基づいて1コアに電界緩和リングを設置,2コアのフランジの材質の改善を行い,絶縁破壊に対する安全係数を改造前の3倍に引き上げた。また,PFLの計算機シミュレ-ションによる動作パラメ-タの評価及びその最適化を実施し,定格動作のための条件を整えた。また,電圧変動率低減のため,充電に可飽和インダクタ-を用いた新しい方式のPFLを開発し,波形整形性の大幅な改善を実験的に確認した。現在,発生電圧の向上とビ-ム品質の評価実験を実施中である。
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