| 研究概要 |
(1)2ーニトロビフェニル(2ーNBP)の単結晶を作成し,X線結晶解析を行って、結晶中における分子の空間的配置を決定した。次に、77Kで紫外線照射した2ーNBP単結晶中に生じた三重項分子種について、単結晶法による電子スピン共鳴(ESR)の実験を行った。なお,これまでに行った研究結果から、この三重項分子種については、ニトロ基の結合していないフェニル基のオルト位の水素がニトロ基の酸素に引き抜かれた構造を推定している。本実験で、そのゼロ磁場分離(ZFS)テンソルの主軸と結晶軸との関係を求めた結果、上記の構造における不対電子の密度の最大点を結ぶ方向が、ZFSテンソルの最大主値を与える主軸の方向に非常に近いことが判った。それゆえ,この三重項分子種の構造として,上記の構造が妥当なことが判明した。
(2)2ーNBPのメチル,メトキシ,カルボキシ,ヒドロキシメチル,フッ素の2'ー,3'ー,および4'ー置換体を合成し,77K剛体溶媒中で紫外線照射してESRの測定を行った。その結果,これらのうち,4'ーメチルーおよび4'ーフツ化ー2ーNBPと,3'ーカルボキシー2ーNBP以外の3'ー置換体、並びにすべての2'ー置換体から、77Kで安定な三重項分子種の生成が確められた。これらのZFS定数は,被照射2ーNBPの値に非常に近いため、これらのラジカルの構造は2ーNBPの場合に類似していると考えられる。また、二個の2ーNBP基をメチレンまたは酸素で架橋した分子を合成し、77K剛体溶媒中で紫外線照射してESRの測定を行った結果、フェニル基のオルト位またはメタ位&架橋した分子からは、2ーNBPの場合に非常に近いZFS定数の三重項分子種が生成することが判った。さらに,ポリ(4'ービニルー2ーNBP)を合成し、同様な実験を行った結果、77Kで安定な三重項分子種が生成することを確めたが、詳細は検討中である。
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