研究概要 |
成果報告を纏めた冊子は,I 序, II 実験的アプロ-チ,III 実験方法,IV 輻射寿命の屈折率依存性,IVー1 アントラセン誘導体ーー孤立分子,IVー2 アントラセン誘導体ーーそのクラスタ-,IVー3 アントラセン誘導体ーー希ガス以外の錯合体,V 輻射寿命の凝縮相への外挿,VI希ガスマトリックス中での輻射寿命,VII 高圧力効果,VIIIアントラセン誘導体以外の化合物についての検討,IX 結びーー今後の課題と展望,の各節からなる.始めに本研究の重要性とその理論的背景について述べ,自然輻射寿命を決めるミクロ分子環境を解明するために我々の用いた実験方法について概説した後に,得られた成果について詳述した.主な点を挙げると, 1.孤立分子の0ー0帯の螢光寿命(=輻射寿命)と,nーヘキサン中で求めた輻射寿命との関係を見てみると、驚くほどよくn^2(nは屈折率)の関係式を満たすことが見いだされた. 2.高圧力下での螢光寿命測定から輻射寿命の屈折率依存性から,室温,溶液中での螢光量子収率が1か1に等しいとみなしてよいアントラセン誘導体(9,10ーdicyanoanthracene(DCNA),9,10ーdiphynylanthracene(DPHA),9,10ーdimethylanthracene(DMEA),9,10ーdimethoxyanthracene(DMEOA),9ーcyanoanthracene(CNA))を対象とし,DMEOAを除いて,n^2の関係式から予測されるものに近いことを見出し,n^2の関係式を確立した. 3.渋谷の理論によると分子の振動子強度は分子のおかれている空孔の形によって決められる.一方,Jortner等の考えではクラスタ-の輻射寿命は親分子の形にはよらない.また,平山等の示した関係式では分子吸光計数が媒体によって影響を受けなければ,輻射寿命の屈折率依存性は親分子の形のよらない.これらのことを確かめるために,アントラセン誘導体とは形が大きく異なる長鎖型の化合物であるQUI,BBQ,POPOP,BisーMSBについて,輻射寿命の圧力効果を調べた. この他,マトリックスアイソレ-ション法,液滴の発生についても,将来の研究につなげる基礎的検討を終えることができた. 最後に発表論文のコピ-を一括して掲載しておいた.
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