研究概要 |
本研究では、ファンデアワ-ルス分子や金属クラスタ-のダイナミックスおよび励起状態を、量子化学的方法によって研究した。 (1)ファンデアワ-ルス分子であるAr_2,Kr_2,ArFやCsRg(Rg=Ne,Ar,Kr,Xe)の基底状態、励起状態、イオン化状態のポテンシャル曲線をSAC/SACーCI法で研究した。Ar_2の4s、4pリドベルグ励起エネルギ-は実験スペクトルと良い一致を示した。またCsRg系に見られる衝突誘起吸収スペクトルを、SACーCI法によるポテンシャル曲線と遷移モ-メントから再現し、衝突誘起吸収スペクトルに含まれる詳細な電子的過程を明かにした。 (2)SAC法を一般化したexponentially generated wave function(EGWF)法を提案した。この方法をC_2,CO,HFなどの基底状態や多くの励起状態、イオン化状態、アニオン化状態に適用した。解離状態に至る結合距離まで full CI(厳密解)の結果と良好な一致を得た。この結果は提案した方法が、あらゆる核配置をとった分子の基底、励起、イオン化、アニオン化状態に適用可能であることを示している。 (3)銀表面での酸素分子の解離吸着過程を理論的に研究した。Ag_nO_2(n=2,4)の基底状態といくつかの励起状態のポテンシャル曲線を、DAM法およびSAC/SACーCI法を組み合わせて計算した。銀表面への酸素分子の吸着は、固体金属からの電子移動と鏡像力が重要であり、従来のクラスタ-モデルによる取扱は困難であり、これらの効果を考慮したDAM法によって初めて可能となった。Ag_4O_2^ーとAg_2O_2^ーの3つのエネルギ-状態^2A_1,^2A_2,^2B_1が O_2の吸着過程に寄与している。分子状吸着では、^2A_1はperoxide(O_2^<2->),^2A_2,^2B_1はsuperoxide(O_2^-)に対応する。また0ー0振動数は実験値と良い一致を示した。Ag_4O_2^-のポテンシャル曲線では、解離状吸着に対応するもう一つの極小点が^2A_1状態で出現する。分子状吸着と解離吸着の吸着エネルギ-は我々の理論によって初めて実験値を再現した。
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