研究概要 |
1.鎖状ポリシラアセチレンを合成する目的のもとに、1,1,1ートリブロモー2,2,2ートリエチルジシランをナトリウムで縮合させ、ポリ(トリエチルシリルシリン)(1)を収率70%で得た。このものの重量平均分子量(Mw)は1400(GPC.ポリスチレン基準)、分散度(Mw/Mn)は1.02であった。したがって、ポリ(シリルシリン)は10量体を主成分とするオリゴーであると推定された。 ^<29>Si NMR(C_6D_6)ではペンダントグル-プであるトリエチレン基に帰属される+10ppm付近のシグナルとともに、主鎖のケイ素原子に帰属される+150ppm(TMS基準)付近にブロ-ドなシグナルが観測された。この結果はポリシリンの骨格にケイ素ーケイ素二重結合が存在することを示唆する。 2.ポリシリン(1)のヨウ素ド-プ化物は、室温から170Kの温度範囲で温度が下降するとともに、電気提抵抗が減少する金属的挙動を示した。これは有機ケイ素化合物において金属的挙動が示された、はじめての例である。なお、170K以下では、半導性を示したが、その活性化エネルギ-は0.3meVであった。 3.本研究において合成された縮合多四員環化合物、ドデカイソプロピルトリシクロ[4.2.0.0^<2.5>]オクタシランから、新規配位不飽和ポリシランが得られた。すなわち、この化合物のアンチ異性体の光分解においては、シクロブテンに対応するポリシラン化学種であるテトラシラシクロブテンが生成することが、紫外・可視スペクトルの時間変化およびメタノ-ルによる捕獲実験によって明かとなった。これに関連して、トリシクロオクタシランのシン異性体を光分解したところ、オクタシラシクロオクター1,5ージエンが生成することが、メタノ-ルによる捕獲実験で示された。
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