研究概要 |
炭素陽イオン生成における隣接シグマ結合関与の機構特性を定量的に評価するため、炭素に比べて格段に大きな超共役能をもつβーケイ素基質としてαーペンタメチルジシラニルベンジル臭化物(1)、2,2,3,3ーテトラメチルー2,3ージシラ-1ーインタニル塩化物(2)、1ーフェニルー2ートリメチルシリルエチル トリフルオロアセテ-ト(3)、2ーフェニルー1ーペンタメチルジシラニルシクロプロピル臭化物(4)、および2ーフェニルー2ートリメチルシリルエチル塩化物(5)を選び、ソルボリシス機講の詳細な解析を行い、担当するβーアルキル基質との速度比からβケイ素の炭素陽イオン安定化効果を定量資価した。基質(1)はβケイ素による10^5以上の速度加速と100%トリメチルシリル基の1,2ー転位を伴い、典型なα関与基質の特微を示しているが、WinstinーGrunaald溶媒効果解析(m=0.93)、LArSR置換基効果解析(r=1.16,p=3.71)、重水素αー二次同位体効果(kh/kd=1.16)等の結果からαー(ペンタメチルジシラニルベンジルカチオン)の生成を律速とするkcソルボリシスであることが立証され、α関与機構の本質を物語る重要な結果である。興味深いことにSiーSi結合が脱璃基と直交する基質(2)ではβケイ素効果が全く現れないという事実であり、βケイ素効果が超共役に基づくことを如実に示す結果である。基質(3)は(1)と異なりシリル基の転位ではなく脱離を伴うが、βケイ素遺果として3X10^5の加速を示し、詳細な動力学的解析結果は(1)と同様にkc機構で進行するきとを証明した。これらの事実はα関与が非古典炭素陽イオン生成に基づくものではなく、超共役による炭素陽イオン安定化であることを強く示唆する。基質(4)、(5)からαおよびアリ-ル関与系におけるβーケイ素効果を評価することができるが、(4)ではシクロプロピル基のα関与とkc機構が約1:1の割合で起こり、一方、(5)ではアリ-ル関与は完全に抑制されkc機構のみが進行し、これらの系で通常起こり得ないkcル-トをβケイ素によって実現できることは関理有機化学上極めて興味深い。
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