研究概要 |
鎮静作用をもつことが知られているエンゴサク塊茎のメタノ-ル抽出物を濃縮後、2%硫酸酸性で塩化メチレンで抽出される「中性」分画は、D_2レセプタ-に対する結合実験において、塩基性分画とほぼ同等の活性を示し、向精神作用物質の存在が示唆された。しかし精査の結果、この分画の有効物質は、イソキノリンアルカロイドである微量成分イソコリパルミン(IC_<50>l.10X10^<ー2>μg/ml)であることがわかった。このものは塩基性分画にも微量成分として含まれていた。化学的に中性で、強いD_2結合活性を示すものは見出し得なかった。そこで方針を変え、対象を一般化し従来研究の少なかった植物抽出物について、D_2ばかりでなく、D_1,5ーHT_<1a>,_<1b>,_<1c>レセプタ-結合性物質の検索を行うことにした。このような物質は向精神作用を持つことが期待できるものである。 丁字草の粗抽出物に、上記レセプタ-に対する結合実験を行った所、5ーHT_<1a>に選択的に結合する物質の存在がわかった。分画の結果、この作用物質はテトラヒドロアルストニン、ヨヒンビン、ーヨヒンビン(それぞれIC_<50>433nM,130nM,96nM)と同定された。この中で入手容易なヨヒンビンは、上記結合実験に含まれていないα_2レセプタ-に強く結合することが既に知られているので(IC_<50>48.8nM)、つぎにこのものを修飾してα_2結合活性を抑え、5ーHT_<1a>に選択性の高いものへの変換を試みた。しかし現在のところ、17ー0ートシラ-トのα_2:5ーHT_<1a>1:1の活性比を得るに止まっている。 インド伝統薬用植物Litsea glutinosaにはD_1および5ーHT_<1a>レセプタ-結合物質が含まれていた。これらをそれぞれイソボルジン、ボルジン、新物質2ーヒドロキシー1ーメトキシー10,11ーメチレンジオキシノルアポルフィン,、レチクリン(以上D_1)、およびボルジン(5ーHT_<1a>)と同定した。
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