研究概要 |
異種溶媒間の液間電位差には、a)電解質の濃度とイオンの輸率,b)イオンー溶媒間相互作用,c)溶媒ー溶媒間相互作用,のそれぞれと関連した三成分(a),b),c))が含まれている。本研究の成果の概要は、 1.液間電位差の三成分について定量的な検討を行った。同種電解質・異種溶媒間の液絡のおける成分a)とb)の計算式を導き,一方,三成分の変化が夫々別々に測定可能という経験的事実に基づいて,成分a),b)の実際の変化を電位差法により測定した。アルカリ金属塩を含む20種以上の電解質を用いて検討した結果,成分a)について導いた式は実験結果によく合い,成分a)の見積りに利用できることが判明した。成分b)について導いた式は,互いに混じり合わない溶媒間の液絡では,実験結果と定量的に合致した。またこの式は,混じり合う溶媒間の液絡でも定性的に成立した。この結果,成分b)の見積りも可能になった。成分c)は,電解質濃度の増加によって幾分減小することもあるが,多くの場合,電解質の種類と濃度に無関係であった。異種電解質・異種溶媒間の液絡についても,各成分についてはほぼ同様の取扱いが可能なことを確めた。また三成分の値を夫々別々に見積り,その合計として液間電位差の値を求める方法を提案し,従来法との比較によって,その妥当性を証明した。 2.分析化学・溶液化学における異種溶媒間液間電位差の間題を総合的に考察し,対応策を検討した。またその結果をイオン溶媒和の研究に応用した。 3.異種溶媒間の液絡で起きる現象を動的に検討するために,液々界面イオン移動ポルタンメトリ-の応用を試みた。互いに混じり合う溶媒間の場合,透析膜を両溶液間に挿入することが有効なことを見出し,現在研究を実施中である。
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