研究概要 |
希ガス原始成分は太陽系形成に関わる情報を保持していると考えられており、始源的隕石中に存在する希ガスの研究は太陽系初期の歴史を知るうえで重要である。 このような希ガス原始成分は、炭素質隕石のような未分化隕石中に存在する一部の鉱物に遍在することがわかってきており、種々の希ガス成分を担う物質の同定には鉱物分離や薬品による選択的溶解を利用する方法が行われてきた。 本研究は、このような希ガス成分とその担体物質との関連をレ-ザ-・ビ-ムを用いて隕石の微小領域を加熱溶解して希ガス組成を測定するという手法を用いて調べることを目的としている。 このため希ガス分析装置の検出感度は、Xeなどの同位体原子数で1万個程度にまで高められた。 現在までに測定された炭素質隕石は Allendeと Murchison であり、分析ポイントは40を越える。 デ-タの吟味はまだ不十分であるがいくつかの興味ある結果が得られている。 特に AllendeのCAI(CaーAlーrich Inclusion)にはその種類にもよるが ^4He, ^<40>Ar, ^<129>Xeが共に異常に濃縮しており U,K,Iの含有量が特に高いことを示唆している。 K,Iは比較的揮発性の高い元素であり、高温凝縮物と考えられるCAIに高濃度に存在することの説明は困難である。 また Murchison と Allende のコンドル-ルに存在するNeの捕獲成分(原始成分)は異なっており、両者のコンドル-ルが違った環境で作られたことを示しているように見える。 EPMAや電顕による観測との対応を試みているが、これについては、なお検討を要する。 このレ-ザ-を用いる局所分析の手法は、炭素質隕石に限らず不均一分布を持つ隕石の分析や地球岩石中のインクル-ジョン中の希ガス分析など多方面への応用が可能であることが分かった。
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