研究概要 |
初年度の研究で溶融珪酸塩からジルコンを直接合成することは困難なことがわかったので,フラックスを用いてジルコンを合成した。この合成では,Hfの他,微量元素として,U,Th,重希土類元素を天然火山岩中のジルコンと同程度の含有量になるように加えた。この合成ジルコンに対する各元素の固一液間分配係数と火山岩中のジルコンに対する分配係数(石基ガラス中の各元素の濃度をジルコン晶出時のマグマの液組成と仮定して求めたもの)を比較した。その結果はきわめてよい一致を示し,火山岩中の斑晶ジルコンについて,石基ガラスをマグマの液体と考えて計算した分配係数が平衝における分配係数と一致する事がわかった。 マグマ中で早期に晶出した斑晶ジルコン中の元素分布が拡散によりどのように変化するかを調べる目的で,純粋なジルコン(ZrSiO_4)とハフノン(HfSiO_4)を合成し,両者を接着することにより,また純粋なジルコンを種結晶として表面にハフノンをエピタキシアル成長させたものを用いて,1600℃におけるZrとHfの拡散定数を求めた。この拡散定数を石英安山岩マグマの温度800〜900℃になおすと,ジルコン粒子中のZr,Hfは10^4年程度ではほとんど移動しないことがわかった。U,Thの拡散定数を,これらとほぼ同じと考えると,マグマ中で早期に晶出したジルコン中のU,Th同位体の分布は10^4年程度たっても保持されていることになる。 1985年に南米コロンビアのネバド・デル・ルイス火山から噴出した軽石主試料のジルコン・ガラスのペアにより求められたウランーイオニウム年代が1万年を越したが,その原因をジルコンのU,Thの分配係数と軽石中構成鉱物の組合せの関係でジルコンが斑晶か捕獲結晶かを考察した。その結果,ルイス火山軽石のジルコンは斑晶と捕獲結晶の混合物であることが明かになった。
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