研究概要 |
テクネチウム錯体は,錯体化学の分野においてもまたその応用として放射性薬品としても注目されている。しかしテクネチウムは安定同位体が存在しないから,使用量の増大とともにその放射性廃棄物の回収も重要な課題になっている。このような観点から以下の研究を行なった。 1.トリス(アセチルアセトナト)テクネチウム(III)は置換不活性であるが,アルカリ性溶液においては塩基加水分解が室温においても進行することが認められ,その反応機構を確立した。 2.トリス(アセチルアセトナト)テクネチウム(III)は,強酸が存在すると,アセトニトリルなどの溶媒が溶媒和反応することが認められ,実際2Mの過塩素酸中でビス(アセトニトリル)ビス(アセチルアセトナト)テクネチウム(III)の生成速度は,30^゚Cにおいて(8.86±0.08)×10^<-4> s^<-1>と求められ,また過塩素酸塩として単離することができた。合合成した錯体は,赤外スペクトルおよび元素分析によって同定した。合成した錯体を用いて,アセチルアセトンを含む混合配位子錯体の合成を計画している。 3.ヘキサキス(チオウレアト)テクネチウム(III)を出発物質としてEDTAとの置換反応によるテクネチウム(III)ーEDTA錯体の生成反応機構を速度論的に確立した。 4.テクネチウム錯体の塩基加水分解反応機構に関する知見から,テクネチウムを放射性廃液から他の多くの金属イオンから陰イオン交換法によって,カラム樹脂上に濃縮・分離する方法を確立した。さらに過塩素酸によって溶離した過テクネチウム酸を濃縮するプロセスとして、TBPによる溶媒抽出法を検討した。希釈剤として四塩化炭素およびシクロヘキサンを用いて,テクネチウムの分配比の酸濃度およびTBP濃度依存在を検討し,テクネチウムの効果的な濃縮法について検討した。
|