研究概要 |
光誘発電子移動反応系の開発ー(1)2,2'ービピリジン(bpy)や2,2'ービピラジン(bpz)を配位したRu(II)錯体を光触媒とする有機化合物の酸化反応:アスコルビン酸の酸素による酸化反応の光触媒反応におけるRu(II)錯体のbpzやbpy配位子の役割を速度論的に検討した。[Ru(bpy)_3]^<2+>と[Co(edta)]^-を用いてアミノポリカルボン酸やシュウ酸イオンの光触媒酸化反応機構を明らかにした。これらの光触媒反応系を用いることにより酸素分子から過酸化水素を発生させる効率の良いサイクルを構築することが可能となった。また,通常の条件では起こらないペルオキ二硫酸によるシュウ酸の酸化反応を[Ru(bPz)_3]^<2+>を用いた光触媒サイクルを用いることにより効率良く反応を進行させることができた。(2)ヨウ素を光増感剤とするアミノポリカルボン酸の酸化反応:EDTAをはじめとするジアミノポリカルボン酸およびモノアミノポリカルボン酸のヨウ素による光触媒酸化反応がI_2〓ラジカルアニオンを反応種とするラジカル連鎖反応であること,アミノ基の非共有電子対の存在が酸化反応に重要であること,およびこれらは完全な速度論的解析ができる基本的な反応系であることが明らかになった。現在,この反応系の応用面を検討中である。(3)[Ru(bpy)_3]^<2+>および[Ru(iーbiq)_2]^<2+>による[Co(ox)_3]^<3->錯体の分子内電子移動を伴う光増感分解反応:この反応が立体選択的に進行し,しかも溶媒の組成によって光学活性体に対する選択性が逆転することを見い出した。励起種のイオン対の安定性が見かけの立体選択性を支配する要因であることを明らかにした。また,両者のRu(II)錯体による光触媒反応機構が全く異なる速度論的挙動をとることを見い出した。これは配位子の違いからくる電子移動反応速度の差が光触媒反応機構の差として現れていることが明らかとなった。現在,これらの反応を利用した光誘発電子移動触媒系の構築を目指してさらに検討を加えている。
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