研究概要 |
2年間の研究の成果として,可塑化ポリマ-フィルムの抽出特性の解明,および高感度簡易センシング法(肉眼識別,吸光光度法,蛍光光度法)の開発について,各々当初の目的を達成し,新しい微量計測方式を確立したさらに,フィルム中に含まれる可塑剤系溶媒の抽出特性と,従来の抽出溶媒とは大きく異なる物性(不揮発性,水に対する難溶性等)に着目し,これをフィルム(固相),液状,およびその中間的物性にわたる広範な形態で用いる系統的研究への新展開を開始した。成果の具体的内容は以下のとおりである. 1.PVCフィルムを用いる分離濃縮・センシング法の開発 可塑剤フタル酸ジーnーオクチル(DOP)の含有量20〜30%透明PVCフィルムは,高感度比色定量法(肉眼識別,吸光光度法)および蛍光光度法のための分離濃縮媒体として有用である。その抽出選沢性に関しては,第2相である可塑剤の抽出特性と目的化学種の水溶制とが支配因子である.本法に適合する試薬系の探索を行い,(1)色素対イオンを用いる混色カラ-システム,(2)キレ-ト単色系によるブランクを排除した吸光法,および(3)蛍光法へ各々応用を試みた.この中(2)についてはネオプロインを用いる微量銅のフィルム抽出吸光光度法の確立を行った.さらに,抽出速度に対する界面通過の規制,および抽出種のフィルム中における深度分布についても検討を加えた.2.新しい分離濃縮媒体としてのポリマ-含有塑剤系溶媒の開発 可塑剤系溶媒に少量のポリマ-を含有させた媒体(例.DOP 70% 以上ーPVC)では,固体類似の形状保存性と液体類似の抽出速度を付与できることを見出した.3.一滴溶媒濃縮法の開発 可塑剤系溶媒の不揮発性を利用して,従来の有機溶媒相を微少量へ高倍率濃縮する方法を開発した.いずれも分離濃縮・センシングの新手法を与えることが期待できる.
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