研究概要 |
本研究は,金属アルコキシドなどが酸化物の表面水酸基との反応により容易に固定化される性質を利用した新しい金属酸化物薄膜,コ-ティング膜の作製法(表面固定化法)の開発を目指したものである。MgO,ゼオライト上へのSiO_2薄膜の作製,多孔質のバイコ-ルガラス上へのSnO_2薄膜の作製について検討し,以下の成果を得た。 1.SiO_2ーMgO系:テトラメトキシシランの気相表面固定化法によりMgO表面に1層以下のSiO_2薄層を生成させた場合,シリカゲル(SiO_2)よりも強いルイス酸点が,Si固定化量とほぼ同量生成した。この酸点は発現は,MgOーSiO_2界面に生成するMgーOーSi結合を通しての電子的,構造的効果に起因すると推定され,表面固定化法により1層以下の薄膜を形成させれば,その表面あるいは界面に新しい特性,機能が引き出せることがわかった。 2.SiO_2ーゼオライト系:テトラメトキシシランを用いた気相表面固定化法,およびジメチルシロキサン環状オリゴマ-を用いた液相表面固定化法によるゼオライト外表面へのSiO_2薄膜の選択的生成により,細孔入口径の精密制御とガス吸着特性の改変が達成でき,その効率は液相法が優れていることが判明した。 3.SnO_2ー多孔質バイコ-ルガラス系:スズキプロポキシドの液相表面固定化法による多孔質バイコ-ルガラス表面へのSnO_2薄膜の生成により,導電性の賦与とガス透過能の制御が同時に達成できた。さらに,可燃性ガスとの接触による導電性変化からガス検知が可能であり,新しいガスセンサ素子構築の可能性が示唆された。 基板表面と膜前駆物質(金属アルコキシドなど)の化学反応を基にしている表面固定化法では,原理的に1層ずつ,化学的に制御して薄膜が作製できるため,上述の特性や機能の制御,改変が達成されると結論でき,本法が特徴ある金属酸化物薄膜作製技術であることが判明した。
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