研究概要 |
生物が生命活動を維持していくためにはタンパク質がその機能を正しく発現していることが必須である。それためには各々のタンパク質が機能する場所に輸送される局在化という段階と,それが活性化され,完成型タンパク質となるマチュレ-ションの段階を正しく受ける必要がある。 枯草菌をはじめとするグラム陽性菌の分泌蛋白質ではプロ構造を持った前駆体として培地中の分泌され,完成型となる酸素が多く知られており,プロ構造のプロセシングを解析するのに有効な系である。そこでグラム陽性菌の中で最も遺伝学的基礎研究が進んでいる枯草菌を材料としてそのプロセシングの機構を解析した。 枯草菌における分泌タンパク質のプロセシングやプロ構造が分泌に与える影響を解析するために枯草菌αーアミラ-ゼ・シグナルペプチドと完成型耐熱性αーアミラ-ゼの間に大腸菌プラスミドpBR322 DNA由来のペプチドを挿入した融合耐熱性αーアミラ-ゼを構築した。融合耐熱性αーアミラ-ゼを大腸菌および枯草菌に導入して発現させたところ,pBR322DNAに由来するペプチドの挿入によって、ほとんどの場合,酸素タンパク質の分泌量は低下した。しかし21アミノ酸からなるペプチドを挿入させたものでは,枯草菌の場合親株の約1.7倍の分泌生産量が増大した。これによりプロ構造の改良により分泌量を増大させ得る可能性が示された。枯草菌および大腸菌により分泌された耐熱性αーアミラ-ゼの分子量およびN未端付近のアミノ酸配列の解析の結果、大腸菌ではプロセシングを受けず前駆体として合成されるのに対し,枯草菌では正しくプロセシングされた完成型酸素として分泌されていた。枯草菌におけるプロセシングを調べるために大腸菌で合成した前駆体をinortro系で解析したところ、枯草菌のアルカリ性プロテア-ゼがプロセッシングの主要酸素として働いていることを明らかにすることができた。
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