研究概要 |
酵素反応の有する高い立体選択性を利用して,Dーパントテン酸あるいはその合成中間原料であるDーパントイルラクトンなどの光学活性アルコ-ル類の新しい生産方式を確立するために,(1)化学的合成法で得られるケトパントテン酸,ケトパントイルラクトン類のDーパントテン酸またはDーパントイルラクトン類への不斉還元,(2)脱水素酵素または酸化酵素によるLー体基質の立体選択的酸化反応を含むラセミ型パントテン酸またはパントイルラクトン類のDーパントテン酸またはDーパントイルラクトン類への変換について検討した。 (1)については,グルコ-スを還元のエネルギ-源としてCandide属やSporobolomyces属酵素母のあるものが,ケトパントイルラクトンあるいはケトパントテン酸エステル類を,Agrobacterium属細菌がケトパント酸をそれぞれ特異的に対応するDー体アルコ-ルへと変換することを認め,培養条件および反応条件の検討を行った結果,光学的に純粋な生成物を80〜120g/lの収量(変換率90%以上)で得ることができた。また,これらの還元反応に関与する酵素の糖製単離を行い,それぞれが基質特異性を異にするNAPH依存性のカルボニルレダクタ-ゼであることを明らかにした。 (2)については,NocardiaやRhodococcus属の細菌にLーパントイルラクトンの酸化活性が高いこと,またRerythropolisではLーパントイルラクトンの酸化によって生成したケトパントイルラクトンがさらにDーパントイルラクトンにまで還元する能力を併せて有することを認めた。最適条件下では20gIlのラセミ体パントイルラクトンをほぼ定量的にDーパントイルラクトンへと変換できた。上記の酸化反応に関与する酵素を均一に精製し,FMN依存性の新規な脱水素酵素であることを明らかにした。
|